拘禁だけが刑罰なのか?

フロランス・レナル(Florence Raynal)
ジャーナリスト

訳・中村孔美

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 監房はあふれ、生活状態は悪化し、刑事施設は爆発の寸前だ。拘禁刑は経費の割に効果が薄いことで知られているのだが、依然として刑の中心となっている。拘禁以外の「代替刑」を広げようという方向ははっきりと示されているのだが、刑務所外で行われる刑罰に関する人や金が、全くといっていいほど足りない状況だ。仮釈放といった代替措置の活用も下火になってしまっている。[訳出]

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 「3人用の監房が満員のときに受刑者を載せたトラックが到着するようなことがあると、所長は何とかせねばと、床に敷くマットレスを引っぱり出してくる」と所外刑罰の担当者のファジェ氏は認める。こういった慣行の結果、収容能力4万9400人のところに5万4000人の被拘禁者が詰め込まれるという事態が生じている(1)

 この20年でフランス国内の被拘禁者の数は倍増した。増設が追いつかない刑務所では、満杯率が130%を超えたところも現れている。1996年4月にディジョン刑務所で起きた暴動の原因の一端にも、2つの数字がある。収容能力169人に対して服役囚300人。

 拘禁刑に対する「代替刑」と呼ばれる刑のなかで裁判所が好むものは、保護観察付き執行猶予と公益奉仕労働に限られているようだ。とはいえ、代替刑が刑務所の飽和状態に及ぼす効果も、刑期の延長によって薄められてしまっている。保護観察付き執行猶予の制度は1958年に設けられ、所定の義務(職業への従事、住居の確保、治療を受ける義務など)に従う受刑者に対して刑の執行を免除するものである。公益奉仕労働の制度は1984年に設けられ、軽罪犯を対象としている。

 代替刑が飛躍的に発展した理由には、司法官が考えるメリット(刑罰の個別調整、償い、社会復帰、公益奉仕労働の判決の際の市民社会の関与)のほか、訴訟件数の増加と、単純執行猶予[訳註:条件は5年以内に犯罪を犯さないことのみで保護観察なし]を請求しにくくした最近の刑法改正の2つが挙げられる。「つまり、裁判所が代替刑をポリシーをもって採用しているというわけでもなく、法改正の結果と言えるかもしれない」というのが、全国刑事執行判事協会(Anjap)のフォシェ会長の分析だ。

 司法官が拘禁だけが唯一の刑ではないと認め、その効果を疑うことさえあるにしても、拘禁刑は依然として、何の前科もない軽罪犯への刑として言い渡されている。しかしながら、復讐欲、社会復帰の失敗、悪影響への染まりやすさ、といった逆効果は良く知られている。国際刑務所監視所のマレ氏は次のように指摘する。「多くの判事は、代替刑を本物の刑とみなすことに抵抗を感じている。依然として拘禁が刑の中心となっている。それは短期刑の比率の高さにも認められる。その上、以前は処罰の対象とならなかったのに、代替刑の創設によって処罰されるようになった者も増えた。放免する代わりに公益奉仕労働をさせるわけだ。社会による管理の増大は危険だ」。とはいえ、刑務所の年間入所者数が8万5000人にまで減少し、ここ10年は落ち着いているのも代替刑のおかげであることは否定しがたい。

問題の奥深さ

 代替刑の実施には深刻な障害もある。「問題は、保護観察委員会に保護観察員が不足していることだ」と司法官組織事務局のペイラシュ女史は強調する。保護観察員とは、受刑者のフォローアップを受け持つ公務員である。人員不足の現実が量刑そのものを左右しかねず、多くの刑事執行判事が刑の決定に当たる軽罪裁判所の判事も兼ねているだけに、量刑の妥当性に対する信頼を失わせることになりかねない。

 刑務所を所轄する行政機関は問題を自覚し、裁判所に対する信頼を取り戻そうと、刑務所外刑罰の担当職員の数を1999年までに倍増し、業務組織を再編する予定を組んだ。だが768人の保護監察員を倍にしたところで、1536人の職員で年間14万人近くを監督する状況になるだけであり、それも大蔵省が予算案を承認すればの話なのだ。ショー刑事執行第一判事の言い分を聞いてみよう。「パリで1年間にひっきりなしに舞い込んでくる案件は4700件。保護観察官の数は21人。当然、案件の3分の2は処理できない。うちの裁判所では判事がその分を引き受けることに決めたが、どこの裁判所でも同様というわけではない」

 保護観察員に委ねられるのは、麻薬中毒やアルコール依存症などの最も重大なケースだけである。代替刑という措置が意味を持つためには、受刑者にやる気を起こさせ、信頼関係を作り上げることが欠かせない。時間もかかれば人や金もかかるのだ。協力市民団体の強固なネットワークの支えがあっても、雇用と住居を通じた社会復帰は、社会・経済状況の悪化のためにほぼ不可能になっている。こうした状況の下では、保護観察委員会の仕事の重心が社会復帰よりも再犯防止にシフトしてしまう。

 交通違反とは無関係の軽罪に対するものも含めた運転免許の停止、自動車や凶器の没収、日数単位の罰金など、様々な代替刑のうちには稀にしか言い渡されないものもある。例として、保護観察付きの刑の延期が挙げられる。これは、有罪宣告を受けた者に対し、被害者への補償や損害の賠償など所定の係争を解決するための期間を与え、その後に裁判所に再出頭することを命ずるものである。「審理が1回で済むかわりに2回になるわけだ。夜の11時までかかる法廷があったようなときは、さらに開廷日を増やすような措置などとっていられない!」というのが Anjap のフォシェ会長の解説だ。

 意志的に代替刑を推進するためには、人員や予算の割当だけでなく、キャンペーン活動という手段もある。公益奉仕労働に関して、1994年には全国で様々なポスターやパンフレットが刷られ、裁判所でシンポジウムや展覧会が開かれた。「キャンペーンには真の政治的意志が現れており、すぐに現実の結果となって現れた。公益奉仕労働の件数が明らかに増加したのだ」と刑法社会科学研究所の人口統計学者、トゥルニエ氏は力説する。

 しかし、刑事施設の過密状態を克服するための主な問題点は別のところにある。トゥルニエが明らかにしたように、刑期が長くなり、平均拘禁期間が80年代初めの4.6ヵ月から90年代末には8ヵ月以上に延びた。それには複数のファクターが作用している。訴訟手続の長期化、ある種の犯罪行為に対する処罰方式の変化、規制の厳しい麻薬・風俗関連犯罪の増加などである。このため受刑者の出所が遅れ、監房が飽和状態になっているのだ。

 刑罰の個別調整こそが唯一の解決策と思われる。仮釈放の利点は、社会復帰の見込みがあるために刑期終了前に釈放した服役囚を個別に管理できることにある。しかしながら仮釈放の対象者は激減している。「1972年には資格者の30%に仮釈放が認められた。1982年になると20%に過ぎなくなり、1992年には10%になった。私の見るところでは2002年には0%になるだろう。仮釈放という制度は事実上廃止されようとしているのだ」とトゥルニエ氏は述べる。

 仮釈放された服役囚の再犯の危険は相対的に少ないのだが、様々な理由によって仮釈放は減少している。判事は社会・経済状況の悪化を第一に挙げる。「長期刑に服する者について、受け入れ施設を見つけることが次第に困難になってきている。満員の施設は、人口から言って『第2の刑務所』同然のものになってしまう」とペイラシュ女史は言う。ある種の代替刑が大幅に増加したことで、軽罪による被拘禁者が減少したため、受刑者のなかで重罪犯つまり危険人物が占める割合が大きくなった。それゆえ治安との関連で、刑期終了前の仮釈放の許可がデリケートな問題となった。

 「仮釈放中の再犯は裁判所にとって大きな失点となるので、裁判官も法務大臣も次第に及び腰になっている」ことをショー刑事執行判事は強調する。5年以上の刑についての仮釈放の決定は、裁判官ではなく法務大臣の管轄なのだ。一方、政治的には問題が大きく、世論は硬化している。たとえ妥当な措置だと確信していたとしても、重罪犯の仮釈放という危険を冒そうとする法務大臣がいるだろうか。「Anjap の意見では、法務大臣ではなく、政府から独立した裁判所委員会が決定を下すのが健全な形である。そうすれば、より冷静な検討が可能になり、刑期満了前の仮釈放者が増えるだろう」とフォシェ会長は述べる。

世論は治安を重視

 今や虫の息の仮釈放制度の再生のために、別の解決策も提案されている。理由付きで反対の決定が下された場合を除き、必ず仮釈放を認めるという考えである。これは満場一致には程遠い。「しかしながら、被拘禁者が前向きに出所を考えられるようになる」とフォシェ会長は強調する。

 再犯の危険がゼロになることはありえないにしても、刑務所の過密状態を何とかするために、ほぼ自動に認められるようになった刑の減免と7月14日の革命記念日の一斉恩赦をうまく使えば、再犯は減少するという発想もある。「フランスの刑法政策の原則は、他のヨーロッパ諸国と同様に、刑罰の個別調整にある。その一方、管理のみを目的とする措置を安全弁として重視するために、仮釈放を実施しなくなってきている」とトゥルニエ氏は述べる。減免や恩赦で釈放されて刑が終了した者にしてみれば、もはや誰にも義理はない。その再犯の責任を取るべき誰かもいないということになる。「今のやり方は偽善的で歪んでいる。その欠点を補うために、より長期の刑を裁判官と陪審員が宣告するようになっている」とフォシェ会長は強調する。

 しかしながら現行のメカニズムの危険性は、メエニュリー前法務大臣が設置したカルティエ委員会によって、1994年10月の時点で批判されていた。パリ第二大学の刑法学教授のカルティエ女史は次のように説明する。「まず、刑期の短縮によって得られた時間を、出所後の個別のフォローアップ期間として有効活用することを考えた。だが、法務省も担当機関も耳を貸そうとしない。被拘禁者が別の受け止め方をして、暴動を起こすことを恐れているからだ」。出所後のフォローアップの必要性を強調しつつ仮釈放を再開すべく、様々な提案が出された。これらの提案を具体化させたのは、性犯罪者の医学的・社会的フォローアップに関するトゥボン法案のみである。法案の骨子はギグー現法務大臣に引き継がれ、今年6月4日に採択される運びとなった。

 「われわれ裁判官は、ますます心を狭くした社会と直面している。専門家の問題だった刑罰について、政治家が先見の明を示すかのごとく語るようになった」とフォシェ会長は述べる。刑罰は選挙の争点にすらなっている。左右どちらの政治家も、あまり寛大とは思われない世論に媚びようと治安対策を主張し、目をむくような再犯率を持ち出すのだ。

 しかし、司法官には気に入らないとしても、ある種の刑が有効なのかどうかの議論は行うべきである。Anjap のフォシェ会長は次のように主張する。「何らかの価値の尺度を持っておかなければならないにしても、もはや問題はどれぐらい刑期を長くすべきかということではない。20年や30年に延ばしたところで、社会の安全という観点からは無意味なのだ!  刑務所で実際に起きている事柄を理解しなければならない。出所者が、糸の切れた凧のように手荷物を抱えて飛び出していくのではなく、何かしら枠をはめられて出ていくようにするための方策を見つけることが、刑期を終えた危険人物を野放しにするのを防ぐ唯一の方法である」

 刑務所を空にする(これ以上満員にしない)という目的に立って、ある種の刑の効果についても複数の裁判官団体が疑問を投げかけている。たとえば、被拘禁者の大きな部分を占める不法滞在外国人に関する刑の場合である。どういった意味で、拘禁が不法滞在の解決となるというのか。薬物中毒について、とりわけ適当な処置が施されない場合にも、同様の疑問が起こる。「様々な問題に単一の答えが当てはめられている。他のシステムを探そうとしなかったから今のシステムを正当化しているのだ」と国際刑務所監視所のマレ氏は結論を下す。

 犯罪予防などについても同じ事が言えるのではないか。イギリスの刑法学者のピース氏は、欧州評議会の席で次のように述べた。「拘禁刑と代替刑に関する議論を有益にするためには、犯罪が起きる前に講ずるべき対策の検討にまで、議論を広げなければならない」

(1) 1998年1月1日時点の数字。1年前の被拘禁者の数は5万8000人を超えていた。


(1998年7月号)

All rights reserved, 1998, Le Monde diplomatique + Nakamura Kumi +Saito Kagumi

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