コンゴ民主共和国コバルト鉱山の変わらない児童労働問題

需要が急増する恥辱にまみれた「青い金属」


アクラム・ベルカイド(Akram Belkaïd)

本紙副編集長


訳:村上好古


 携帯電話、電気自動車などに使われるリチウムイオン電池の製造に不可欠とされるコバルトは、その60%がコンゴ民主共和国で産出されている。その需要にはさらに飛躍的な増加が見込まれ、供給不足を懸念する各国のユーザー企業はこの「青い金属」の長期的な確保に躍起となっているが、コンゴの鉱山では児童労働や過酷な環境での労働が続いている。[日本語版編集部]

(仏語版2020年7月号より)

©ル・モンド・ディプロマティーク日本語版

 世界の産業にコバルトの不足する日が訪れる恐れはあるのだろうか。ここ数年、その欠乏の恐れに駆られてコバルトの市場価格は急騰し、年間産出高136,000トン(2019年)という小さな市場(1)が世界の注目を集めている。ずっと以前から医用画像技術や放射線治療に使われてきたこの「青い金属」は、今や大部分の携帯電話や電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池に不可欠の材料となった。コンサルタント会社マッキンゼーの調査資料によると、2030年には世界の自動車保有台数の22~30%は電気自動車になるだろうという(2)。これを代替する鉱物がなく、また電池の再利用はごく一部にとどまることから、この金属は220,000トンの生産を必要とする計算になる。しかしこの中には目下急増中の電動自転車用のものが含まれていないので、低目の見積もりだ。

 ところがコバルトは地球上どこにでも広く分布しているものではない。埋蔵量の3分の2はコンゴ民主共和国(DRC、以下「コンゴ」と表記)にある。同国は2019年に100,000トン産出した世界第一の生産国であるが、鉱山インフラの開発や近代化には苦しんでいる。ロシア(2019年生産量6,100トン)、オーストラリア(5,100トン)、さらにキューバ(3,500トン)やモロッコ(2,100トン)で数多くの開発計画が発表されているが、マッキンゼー社のエコノミストが言う「電気自動車による革命」は、コバルト生産能力の不足によって妨げられるリスクが大きい。UBS銀行のアナリストは、極論すれば、自動車がすべて電気自動車になるには「青い金属」の生産量が世界で1,928%増加していなければならない(リチウムは2,898%、レアアースは655%の増加)と指摘した(3)。実現するには、いくつもの未開発地域を極めて大きな環境負荷を伴う鉱山にしなければならないことになり、不可能な目標だ(4)

 しかし世界中の市場は、こうした状況を見誤らなかった。2018年3月21日にコバルトは、非鉄金属の主要取引所であるロンドン金属取引所(LME)でトン当たり95,000ドルの史上最高値を付けた。2010年代初めの水準からの上げ幅は300%近くに達し、まさに「青い金」という呼び名が相応しかった。その後相場は落ち着いたがなお高水準にあり、2020年の前半は、COVID-19感染症流行の影響で経済活動が停滞する中にあって、トン当たり価格は平均して28,000ドルと35,000ドルの間を上下している。

ペンタゴンも懸念

 多くの一次産品と同様にコバルトもまた、主要中央銀行の低金利政策を利して非常に安く調達した流動性資金をどう運用したらよいか分らずにいるファンドの投機戦略にさらされている。しかし、価格高騰の原因になっているのはやはり中期的な不足懸念だ。

 携帯電話や自動車メーカーは、2018年以来、「青い金属」の調達を確保するため、目立たないところで競争に乗り出している。生産量の全てを電気自動車が使い尽くしてしまうのではないかと恐れ、アップル、サムスンといった企業は、複数年の供給保証を得るため大手採鉱業者と直接交渉を始めた。もっとも、市場での不足分を埋めるために戦略的備蓄を行い、その管理は電池利用者のためのある種の共同組織に委ねるという構想は、失敗に終わっている。スイスに本拠を置くある一次産品ブローカーは、「産出者側はこの考えには賛同しません。それが価格を引き下げる方向に働くからです」と私たちに教えてくれた。「携帯電話や電気自動車メーカーは、コバルト貯蔵施設の維持費引き上げに同意しなければならないでしょう」

 2000年代の初め以来、綿花であれ、石油であれ、レアアースであれ(本紙7月号記事La guerre des terres rares aura-t-elle lieu?参照)、大半の一次産品を取り巻く環境は中国の経済活動(需要、現地生産、外国への工場進出など)に左右されている。コバルトに関しては、中国が製錬事業をほぼ独占していることが際立つ。2019年に中国は、自国鉱山での「青い金属」の生産は2,000トンにとどまったが、世界生産量の80%の製錬を押さえた。これはコバルトをアメリカにとっての「戦略物資」と位置づけるペンタゴンをじっとさせてはおかなかった。国防長官は、こうした依存関係の低減を目指し、2016年以来北米諸国の企業に製錬設備への投資を働きかけてきた。

 2020年5月6日、カナダのファースト・コバルトグループが北米における最大の製錬工場の操業を2021年に開始すると発表したことが、メディアで大きく報じられた。トロントの北、オンタリオ州での5,600万ドルに上るこの計画は、2015年に閉鎖された工場設備の改修をその内容としており、処理能力は25,000トンとされる。計画立案者の見方によれば、中国の工場と同等の競争力があるという。もっとも、この計画の着手に当たっては、カナダ当局の支援と北米における販路確保の保証を得たことが間違いなく有利に働いた(5)。ファースト・コバルト社の経営者によると、製錬される鉱石は、スイス(登記上の本社はイギリス)の鉱山開発関連大企業グレンコアから供給されるという。

 ここで大きな問題になるのは、この鉱石がコンゴの鉱床で産出されたものであるかどうかという点だ。というのも、コバルトに関しては資源不足問題のほかにもうひとつ、論争の的になっているコンゴの鉱山の現状に関する問題がある。19世紀の終わりにベルギー人地質学者ジュール・コルネは、採鉱会社の依頼で探査を行ったとき、コンゴとカタンガ地方の鉱物資源のとてつもない豊かさを形容するのに、「地質学上のスキャンダル(驚異)」という有名な表現を使った。これらの鉱床は1世紀以上を経て今に続き、炭化水素(石油、天然ガス類)と合わせ年間150億ドル近くの輸出収入を生むコンゴの主要な財源になっている。しかしながら、本当の意味の「スキャンダル(醜聞)」は、コバルト鉱山での労働環境と、コンゴが世界の中でも最も貧困者の多い10カ国に入るという不名誉な地位から脱せられずにいることにある(6)

 コンゴのコバルト全生産量の80%はグレンコア、ウミコア、BHPといった大企業が押さえているが、残りは一応合法的な手掘りで産出されている。そこではまさしく「穴掘り」と名付けられた20万人が、命を危険にさらしながら、原始的な道具で全く何の防護用具もないまま働いている。肺疾患や皮膚炎に苦しむ者も少なくない。さらにひどいのは、何千人もの子供が学校に通うことなくこれらの現場で働いていることだ(7)。鉱滓の運搬に割り当てられる者がいれば、鉱石の選別と洗浄に当たる者がいる。狭いトンネルの中にもぐりこみ素手で青みがかった石のかたまりを掘り出すことを強いられる者さえいる。現場でそう呼ばれているこの「死のトンネル」では、事故が頻発する。2019年6月27日、コンゴのコバルト生産の「首都」と呼ばれるコルウェジ市近くのある採掘現場で起こったふたつのトンネル落盤事故では、公式発表で鉱内作業員36人が死亡し(別の複数の情報源は、犠牲者の数は40人以上だとしている)、数十人の負傷者が出た。

 複数の人権擁護団体が定期的にこの状況を告発している。2019年12月15日、国際人権弁護士協会(IRA)は、コンゴのコバルト鉱山での14人の子供の死亡について複数の国際企業が共犯関係にあった、と告発する提訴趣意書をワシントンで公表した。この訴えは、アップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、デル、マイクロソフト、それにテスラを直接非難するものだった。IRAによれば、コバルトは「石器時代に匹敵する非常に危険な労働環境の下、1日1~2ドルで働く子供たちによって、(……)世界でも最も金持の企業が製造する高価な商品に使われる原料を供給するために、コンゴ民主共和国で採掘されている(8)」のだ。

 IRAの動きは、数年来画像を使ってコンゴの鉱山の様子をドキュメンタリーにしているアムネスティ・インターナショナルの活動に同調したものだ。この団体は2016年に、非営利団体アフリカン・リソーシズ・ウォッチ(Afrewatch)とともに、情報、自動車産業の大企業16社(アップル、ダイムラー、レノボ、マイクロソフト、ソニー、サムスンなど)を、自社製品に使われている電池のコバルトが子供を雇っている鉱山で生産されたものかどうか調査しようとしていない、と非難するレポートを公表した。同団体(アムネスティ)の人権に関する企業責任の専門家であるマーク・デュメット氏は、その中で、「シックな店舗のショーウインドウ、また各種先端技術のマーケティングは、腰を曲げて岩の入った袋を担ぐ子供や、生涯続く肺疾患に罹る危険にさらされながら自分が掘った狭いトンネルの中で働く採鉱作業員の姿と際立った対照をなしている」と、語っている(9)

 IRAの告訴であれ、アムネスティ・インターナショナルが非難したことであれ、企業側の反応は、そろって完全な拒否反応だった。情報、自動車産業の大企業は、当初、子供が採掘したコバルトは自社の部品には全く使われていないと断言していた。しかし、非難が執拗に続く中で発言は、サプライチェーンの「複雑さ」、そして「透明性」と「追跡可能性」を可能にするシステムの実現には時間がかかるということを示す方向へと変化した。この最後ふたつの言葉は、2000年代初頭、「血塗られたダイヤモンド」[訳注1]の取引に間接的に加担していると非難されたとき、宝石商たちが使ったものだった(10)

 自動車メーカーのBMWは、生産する電気自動車にコンゴ産のコバルトを使用しないと2019年に決定した。テスラの方は、将来自社で生産する自動車はコバルトを使わずにすむようにすると断言した。もっとも、電池の生産にはこの金属が不可欠であることから、この発表は疑念をもって受け止められている。アップルは、製錬所が「穴掘り」からの供給を受けているかどうかを調査する「第三者委員会」を設置したと明らかにしている。また、2019年には、原材料調達ルートから6社を排除したと発表した。

 この最後に示した危機管理用の対応手段の中で用いられた論理は、採鉱業者と製錬業者への責任転嫁を狙ったものになっている。コンゴのコバルト生産の60%を占め、極めて大きな存在感のあるグレンコアは、自社の鉱山では子供をひとりも雇っていないと宣言し、自分の命を危険にさらして自社の鉱区に不法に侵入する「穴掘り」を非難した。コンゴ最大のコバルト製錬業者である中国企業のホワヨウは、手掘り鉱山からの購入を停止していると2020年5月28日に公表した。つまりその時点まで、「穴掘り」は、たいていは中国人である仲買業者にその生産物を売りさばいていたということである。ホワヨウその他の製錬業者に原料を供給しているのは、過半はルアラバ州に所在するこれら仲買業者なのだ。

 「仲買業者の役割は極めて不透明です。彼らは製錬用のコバルトを、それがどこから来たものであれ購入し、それを買いたいと言う者がいればそいつに転売するのです。彼らの行動を完全に統制できる組織は存在しません」と先ほどのスイス人ブローカーは指摘する。さらに、ホワヨウが「穴掘り」からのコバルト購入をやめているのは一時的でしかなく、おそらく、IRAの告訴によるメディアの騒ぎが収まるまでの間だけのことだろうと続けた。

 コンゴ政府はと言うと、事態の進展にほとんど存在感を示すことができないように見える。2019年11月24日、同国政府は、自分の国を激しい搾取から守るのだという意欲を見せ、コルタンやゲルマニウムと同じ位置づけで、コバルトが戦略的鉱物であると宣言した。そして、これら鉱石の採鉱に賦課するロイヤリティを3.5%から10%に引き上げる新たな鉱山規則を公布し、採鉱会社との対決に乗り出した。この間、採鉱現場での労働条件に関しては、コンゴ政府は当初、コンゴの国益を狙った[外国企業の]策略に対する警戒を呼びかけ、「私のコバルトに手を出すな」[訳注2]というジャーナリストと非営利団体によって始められたキャンペーンを支持した(11)。しかし、数々の新事実が明らかにされるに及び、やがて、コンゴ では子供の労働は禁じられているともとの主張を繰り返すようになり、態度を消極化させた。いかにも論拠に乏しく、これでは、労働者の90%は技能資格を持たないこの国が、国民に直接利益をもたらす真の産業開発計画を未だに整備できずにいることももっともだと思わざるを得ない。その鉱物資源がかくも豊かであるにかかわらず、そうなのだ。



  • (1) « Les principaux pays producteurs de cobalt dans le monde de 2013 à 2019 », Statista. 特に注記しない限り、当記事で引用される生産量(トン)は、2019年の推計値である。
  • (2) Marcelo Azevedo, Nicolò Campagnol, Toralf Hagenbruch, Ken Hoffman, Ajay Lala et Oliver Ramsbottom, « Lithium and cobalt : A tale of two commodities », McKinsey22 juin 2018.
  • (3) Henry Sanderson, « UBS takes apart Chevy Bolt, says electric vehicles will disrupt commodity markets », Financial Times, Londres, 19 mai 2017.
  • (4) Bianca Nogrady, « Cobalt : le coût humain et environnemental de l’or bleu de nos transitions énergétiques », Up’Magazine, 18 mai 2020.
  • (5) « First Cobalt seeks government backing to restart Canadian refinery », Reuters, 13 novembre 2019.
  • (6) Lire Colette Braeckman, « Le Congo transformé en libre-service minier », Le Monde diplomatique, juillet 2006.
  • (7) Cf. Inside the Congo Cobalt Mines That Exploits Children, documentaire de Sky News, 27 février 2017.
  • (8) International Rights Advocates (IRA), 15 décembre 2019.
  • (9) « “Voilà pourquoi on meurt”. Les atteintes aux droits humains en République démocratique du Congo alimentent le commerce mondial du cobalt », Amnesty International, 19 janvier 2016.
  • (10) Cf. Greg Campbell, Diamants de sang. Trafic et guerre civile en Sierra Leone, Les Belles Lettres, Paris, 2013.
  • (11) « Don’t touch my cobalt, to dirty it, to blacklist it »。 http://congomines.org, mars 2018で取得可能なアピール。

  • 訳注1] ダイヤモンドの取引が武器購入の資金源となり産出国の内戦を助長しているという認識が広がり、各種の国際的な取引規制が行われることとなった。

  • 訳注2] コバルトの生産に関する外国企業からのトレーサビリティ強化要求に対し、コンゴ独自の基準で対処すべきと主張する国内の運動。コンゴの既存権益を守るという面があると同時に、労働条件改善に関する論点が国内の改革派にも支持されるという2面性を持っていると指摘されている(Annie Callaway, Powering Down Corruption, Enough Project, October, 2018)。

(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2020年7月号より)