米国に従属し続けるEU


セルジュ・アリミ(Serge Halimi)

ル・モンド・ディプロマティーク統括編集長

(仏語版3月号論説)

訳:土田 修



 欧州連合(EU)から離脱するという英国の決断は遅きに逸した。18世紀の産業革命以来の自由貿易、ウィンストン・チャーチルとフランクリン・ルーズベルトが「特別な関係」を結んで以来の米国への追随、英国の経済と政治がシティ・オブ・ロンドン(金融街)に支配されて以来の金融資本主義、10年続いたサッチャー・レーガン時代以来の徹底した新自由主義政策のすべてを具現化した国が英国だ。英国の離脱はEUにとって良いニュースのはずだった。それに、ブレグジットはEUが牢獄ではないということを再確認させてくれるはずだった。というのも今でも、数カ国が新たに加盟しているし、現在の加盟国はいつでも離脱できるのだから。少なくともそうした観点に基づいて英国の議員たちはあれこれ策を弄した後に国民投票の結果に委ねてしまった。こうした類いの民主主義の教訓は現状では意味のないことではない。

 しかしながら、ブレグジットがEUを新自由主義と大西洋主義の軛(くびき)から解放しうると期待する国、中でもドイツはがっかりすることだろう。1963年にドゴール将軍が[英国のEEC加盟に際しての記者会見で]懸念を表明した「米国に依存しその支配下にある巨大な大西洋共同体」は旧大陸を支配するうえで、最早、英国を必要とはしていない。EUが2004年以降、12カ国の加盟を追加で認めてからは特にそうだ。そのほとんどは米国の要請でイラクに不承不承ながら派兵した国だ。新たに加盟した国の中には英語、しかも米国国務省の用意した文章のほかは違った見解を表明できない国もあった。

 大げさだろうか? 1月28日にトランプ政権が発表した「中東和平案」に対する欧州の反応を見るかぎりそうともいえない。国際法に反する提案――イスラエルによるエルサレムとヨルダン渓谷の併合、ヨルダン川西岸の入植――を発表した米政府はコミュニケの筋書きを用意し、同盟国がその文面を用いて賛意を表明するように求めた。「長期にわたる非常に古い紛争を進展させてくれたトランプ大統領の努力にわれわれは感謝している」「真剣かつ現実的で誠意にあふれた提案」「われわれはこの和平案によって紛争が解決することを望む」などだ。米国が和平案を公表した後、ル・フィガロ紙は米国"ご推奨の文言"と、これに対する欧州各国政府の声明とを比較し、「双方の表現に多くの類似点があり、それがまだ必要であったとすれば同盟国に対する米国の影響力を強調する意図がある」ことを見抜いた(1)

 英国はいつもの通り、最も従順な国の一つだった。だが、EUに残留する国のいくつかは、米政府のオウムの役割を英国と競い合った。おまけにフランス政府の反応は意表を突くものだった。確かにフランスは「トランプ大統領への感謝」をこそ示さなかったが、なんと「トランプ大統領の努力を歓迎」してしまったのだ! 結論として言えることは、英国が残ろうが残るまいが、EUの独立がどう考えても実現することはないということか。

 


  • (1) Georges Malbrunot, « Comment les États-Unis ont demandé à la communauté internationale de soutenir leur plan israélo-palestinien », Le Figaro, Paris, 1er février 2020.

(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2020年3月号より)