大統領と〝戦争屋〟


セルジュ・アリミ(Serge Halimi)

ル・モンド・ディプロマティーク統括編集長

(仏語版3月号論説)

訳:土田 修



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 「〝どん底だ〟と言っているうちは、まだ本当のどん底ではない」。最近、フランス外交がリア王のこの台詞を思い起こさせてくれた。フランソワ・オランド大統領の任期の終わりに皆はどん底に落ちたと思った(1)。ある者は[マクロン大統領の]慢心が高ぶることを予言していた。何より米国が欧州各国政府に対するこの上ない蔑視と、北大西洋条約機構(NATO)の義務を減らしたいという願望をあらわにしている以上、なぜフランス外交はそれを利用してNATOを脱し、ロシア政府に対する制裁政策を放棄し、ドゴールが60年前に夢見た「大西洋からウラル山脈」までの欧州協力体制を構想しないのだろう? 結局それは米国の保護から自由になり、大人になることだ。

 大統領不在という架空の状況を利用したフアン・グアイドのベネズエラ暫定大統領就任を承認することで、フランス政府はまたしても米国政府の言いなりになり、クーデタの企てに賛同した。ベネズエラの状況は深刻だ。急激に進むインフレーション、食糧不足、汚職、制裁、暴力(2)。それは権力に立ち向かったり権力を失った者は投獄されるという恐れによって今やどんな政治的解決も困難になっていることによる。ブラジル前大統領ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァの身に起きたことが、ベネズエラの指導者たちの頭をよぎらないはずはないだろう。ルーラは勝利していたはずの大統領選への出馬を阻止され、25年の刑を言い渡された。

 フランスの決断は、フランス政府は国家を承認するのであって、体制を承認するのではないというルールに反している。その決断は同様に、エマニュエル・マクロン氏をしてベネズエラを介してキューバとニカラグアを狙った米国の挑発的政策を支援させることになる。というのもグアイド氏の大統領就任は、ジョン・ボルトン氏やエリオット・エイブラムス氏らトランプ政権内の最も危険な〝戦争屋〟たちが考えついたものだからだ。要するに、グアイド氏が大統領就任を宣言する前日に、マイク・ペンス米副大統領が米国の承認を伝えていたことを誰もが知っている。

 1月24日、マクロン氏は「ベネズエラに民主主義を回復する」ことを求めた。4日後には彼はエジプト大統領アブドルファッターフ・アッ=シーシーにもっと武器を売りつけるために恥じることなくカイロへ旅立った。シーシー大統領は軍事クーデタで政権に就くと即座に6万人の反対派を投獄し、自由選挙で選出されたムルシ前大統領に死刑を宣告した人物だ。自らに理があると主張する外交政策に関していえば、最悪の事態はまだこれからやって来るのではないか?



  • (1) Lire Dominique de Villepin, « “La France gesticule... mais ne dit rien” », Le Monde diplomatique, décembre 2014.
  • (2) Lire Renaud Lambert, « Venezuela, les raisons du chaos », et Temir Porras Ponceleón, « Pour sortir de l’impasse au Venezuela », Le Monde diplomatique, respectivement décembre 2016 et novembre 2018.

(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2019年3月号より)