奪われた議論——予防接種の義務化をめぐって


レイラ・シャシャアニ(Leïla Shahshahani)

ジャーナリスト


訳:一ノ倉さやか


 2018年1月1日以降、フランスで生まれた子供は2歳以前に11種類もの予防接種を義務付けられることになった。予防接種の効用のみを説き、科学的知見に基づいた議論や政治的討論を避けようとする政府の姿勢に対し、一般市民や研究者からは疑問の声が上がっている。[日本語版編集部]

(仏語版2018年1月号より)

Anonyme. – « “I” comme “infirmier” », illustration issue d’un abécédaire de vingt-trois gravures sur bois, 1863
Imprimerie Pellerin, Épinal - © Duvallon - Leemage


 2018年6月1日以降、予防接種を受けていない子供は幼稚園や託児所の利用ができなくなる。予防接種を拒否する親への罰則は、予防接種を規定した公衆衛生法ではなく、子供の衛生に関する刑法に従うことになる。それはより重い罰則(2年間の懲役と3万ユーロの罰金)となる。アニエス・ビュザン連帯・保健相は高圧的な政策転換の意図を明かした。「予防接種義務化は国民の信頼回復を目的としています(1)

 保健総局(DGS)のブノワ・ヴァレ教授は、義務化された11種類のワクチン(2)は「これまで推奨されてきた予防接種スケジュール」に対応しており「その意義は公衆衛生高等審議会(HCSP)によって明示されている」と説明する。さらに普及率が最良の状態(少なくとも国民の95%)に達した場合、義務化は解除されることもあり得る、と補足した。ポリオ対策の最後の義務化は1964年にまで遡る一方、2007年には結核用BCG接種は義務化を解除された。

 11種のワクチン国家予算枠は、社会保険(65%)と付加健康保険制度(AMC)からの出費で賄われている。ワクチンセンターや母子保護施設(PMI)は無料接種を提案するだろう。この措置のための医療保険金庫の追加費用負担は当局によれば1億2000万ユーロと見積もられている。「(その額は)予防接種に投入された27億ユーロの予算総額からみればわずかだ」とヴァレ教授は述べる。

期待外れ

 [予防接種義務化]政策の実施に伴い、政府はDTPワクチン(ジフテリア、破傷風、ポリオ)のみ「6カ月以内に」市場に再投入する措置をとるよう大臣に求めた2017年2月8日付国務院命令に応じることにした(3)。副作用被害が増大したことから、フランス医薬品・保健製品安全庁(ANSM)が2008年にDTPワクチンの使用を一時的に停止したことで、各製薬会社はDTPワクチンと他のワクチンとを組み合わせた混合ワクチン一種類しか提供していなかった。法に従い、DTP(ジフテリア・破傷風・ポリオ)予防接種を希望する親は、子供が任意接種であった百日咳、B型肝炎、インフルエンザ用のワクチンを接種することを黙認するしかなかった。しかし、[ビュザン]新大臣は製薬会社に対してDTP単独ワクチン供給を義務付けるのではなく、その他のワクチンも併せて予防接種を義務付けることにしたのだ。

 この政府の政策は、2015年時点で国務院に提訴していた市民たちにとって期待外れだった。アルミニウム補助薬を含まないDTP単独ワクチンの義務化を要求する請願書に署名した100万人以上の人々にとっても同様であった。アルミニウム塩を含まないワクチンを求めて活動する非営利団体E3M(Entraide aux malades de la myofasciite à macrophages)は、2014年にサノフィ社が提唱したワクチンがアレルギーを訴える患者を増加させたことに抗議し、某X社に対しワクチンの流通をストップさせるため文書偽造および詐欺の罪で告訴した。現行の6種が39ユーロであるのに対してDTPは当時、7ユーロであった。前保健相のマリソル・トゥーレーヌ が約束した公の場での議論は打ち切られた。彼女は2015年5月29日に「予防接種について議論の余地はない」と宣言した当人だった。

 ビュザン大臣は自らの決定を正当化するため「ワクチンについての市民協議の方針検討委員会(le comité d’orientation de la concertation citoyenne sur la vaccination)」の結論を拠り所にするが、実のところ、この委員会は「フランス人にワクチン接種を促すために情報操作を行っている」としてフランス保健協議会(L’ancien secrétaire général de la Conférence nationale de santé)の前事務局長トマ・ディトリシュにより告発されていた。2016年2月19日、その辞任が大きな注目を集めた高級官吏のディトリシュは、保健衛生問題に関する民主主義の欠如に対し警鐘を鳴らしていた。「製薬会社間の利害闘争疑惑を払拭する情報提供がなければ、今後、数多くの親たちが続々と子供へのワクチン接種を止めさせるだろう(4)

 事実、数カ月後の2016年12月に医療ニュース通信社のAPMNewsは、方針検討委員会に所属する医師3人がワクチンの商品化または開発を行う製薬会社と利害関係があることを明らかにし、その中の一人が「[米国の]製薬会社MSD(Merck Sharp and Dohme)と締結した約10の協定、サノフィ社との8つの協定、加えてこの二社及びファイザー社との数々の特典契約(5)について、言及していなかった」ことを暴いた。そして、委員会トップのアラン・フィッシャーが利害関係についての公式声明の中で、2013年にサノフィ社=パスツール研究所賞の褒賞金10万ユーロを受け取ったことに言及していなかったことも明らかになった。おまけに、彼によって示された結論は、重要な争点に関する協議を反映したものではなかった。たとえば、専門家の審判員は「ワクチン義務化の制度は信頼を確立できていない」どころか「逆効果」ですらある、と判断する。市民代表の審判員は、アルミニウム補助薬を使用していないワクチンの効果を追跡調査してこの問題を「論点の中心に」据えることを提案した。[にもかかわらず]方針検討委員会は次のように結論付けた。「現在行われている研究はアルミニウム補助薬に代わるものではない。その効能や安全性は既存のワクチンによって証明されている」。独立医薬情報団体Formindepは、このような協議を「完全な失敗」と見なし、いわば「保健衛生に関する民主主義の議論を警戒する憂慮すべき状態」と解釈する。

 政策を擁護するために保健省は繰り返し「低下し続けるワクチン接種率」を強調した。しかしフランス国立衛生局は相反する情報を開示する。2015年に百日咳、破傷風、ジフテリア、ポリオ、インフルエンザ予防接種を受けた2歳児は95%を超えていた(2000年~2013年は87%~91%)。その他の項目のワクチン接種率も、これらと比べると低かったものの伸びていた(6)。しかも、乳児の接種率は98%と「極めて高く、国民の衛生という目的に適う」ことが認められる。「2016年の健康指標」──つまりワクチン接種義務化以前ということだが──によれば、フランス国民のわずか2%が全てのワクチンに反対で、特定のワクチン(インフルエンザとB型肝炎)についての反対者は2010年には53%を占めていたが2016年には41%だった。

白熱する議論

 「21世紀のフランスで、子供たちが麻疹で命を落とした。パストゥールの祖国であるフランスでは認めがたい」。2017年7月、一般施政方針演説で、2008年から2016年の間に死亡した10人余りの子供たちを例に挙げ、エドゥアール・フィリップ首相はこう語った。予防接種の熱烈な推進者である一般医教育国立協会(Collège national des généralistes enseignants, CNGE)は彼に応えた。「もっと深刻な衛生上の事例に対しては、もっともなことに、このような強権的な政府の姿勢は打ち出されていない」。次のようにも補足した。「麻疹で亡くなった人々の大半は免疫不全のために、予防接種ができない人たちであった」

 結局のところ、衛生上急ぐ理由はなかった。当局は義務化の解除もしくはDTPを市場に復活させた場合に、予防接種率が低下すると考えたのだ。しかし、HCSPは2014年にも次のように呼び掛けていた。「フランスと同等レベルの欧州諸国では、任意接種であっても予防接種率は90%上回っている」

 超党派の7人の国会議員が義務化の実施中止を要求したことを除いては、予防接種義務化の施策は政治の場で取り沙汰されることはなかった。義務化は、医療国際アカデミーを含む知識人や小児医学界の大多数と、共同声明を出して連帯・保健省への支持を表明している医学組合(少数かもしれないが一定の割合の子供たち、とりわけ学校で集団生活をする子供たちまでリスクに晒すことになる。また、これらワクチンのほとんどは虚弱体質者・病人・高齢者・およびワクチンを接種するには幼な過ぎる乳児たちを間接的に守ることになる)から多くの支持を得ていた。

 ほとんどの国が接種を義務づけていないという事実を認めつつも、予防接種擁護派は「義務化の拡大は、フランス特有の事情のもと、監督機関が国民に予防接種を継続させるための唯一の解決法」で、もともと予防接種を「躊躇する」人々が多数存在することに起因していると説明する。公式発表の連署人でパストゥール研究所のフィリップ・サンソネッティ教授は強調する。「若い親たちはワクチンのない世界を具体的に想像できない。感染症の猛威を経験したことが無いのです(7)

 反対に、CNGEにとっては「短絡的で不適切な」この政策は患者の権利に関する2002年3月4日の法案に反している。その条項では「いかなる医療行為も個人の自由且つ明白な同意なしには行い得ない」と定められているのだ。一般医は、義務化が多くの国民の不信感を高め猜疑心を生み患者に対する医療教育方針の蓄積が無に帰してしまう、と危惧している。一般医療の教育現場でも危機感は共有されている。

 2015年に、アメリカ合衆国ではヒラリー・クリントンが「地球は丸く、空は青く、ワクチンは役に立つ」とツイートしていた。今日、ビュザン氏は言う。「これらのワクチンが無害であると私たちは確信しています」一方、リーズ・バルネオウドは著書(8)のなかでワクチンを「医療関係者が水面下で行った“偽善的なリスク最小化”であった」と形容する。予防接種は、ごく稀であっても予測不可能な事を内包している。ワクチンの説明書はそれを自明のこととして認めるだけで十分なのだ。しかし、2015年5月7日公衆衛生高等議会(HCSP)は抗ロタウィルス(胃腸炎)の予防接種推奨をペンディングにした。ワクチン接種後の乳児が死に至りかねないなどの重大な副作用の報告があったからだ。しかし、各ワクチンの安全性を疑ったところで、一度打ったら取返しがつかない。そして、大抵の場合健康な人体に対して行われるため、予防接種に反対する者は「ワクチン反対」のレッテルを貼られるリスクを負う。討論の拒絶は、直面している論議を加熱させ、非合理性を露わにする。

冷静な判断と熟考を要する政策

 「ワクチンにまつわる余りにも多くの作り話や思い込みが、ワクチンを受け入れるか、拒否するかの判断に入り込んでいる」とリーズ・バルネオウドは言う。彼女は、予防接種一般について議論するのはやめ、事実をもとに各ワクチンについて論ずることを主張している。論争を焚きつけるような問題点が数多く存在する。つまり、衛生と医療とは、様々な病気の罹患率低下にどのように関ったのか? 連帯という社会意識に基づく予防接種の理念(ワクチンを受けることが出来ない最も虚弱な人や免疫のない人まで)はどこまで広げたらよいのか? 等の疑問である。血液を介して、あるいは性交渉により感染するB型肝炎用の予防接種を乳児に打つことは正しいのか? リスクの研究に我々は十分な手段を提供しているのだろうか? 冷静な判断と十分な対策を要する夥しい疑問点がある。「ワクチンは共同体の在り方を私たちに問いかけています」とリーズ・バルネオウドは締めくくった。彼女は、これらのいくつかの問題に取り組む研究者が遭遇する障害――それには心理的なものも財政的なものもあるが――について説明してくれた。インフルエンザの権威者であるブルーノ・リナ教授が指摘したように「ワクチンについての研究のほとんどが医薬業界の資金提供を受けている」以上、このような障害は驚くに値しないだろう(9)

 国会議員への公開状の中で一般医は、義務化されているいくつかのワクチンについては、それらのリスクが「存在しない、あるいは取るに足らない」ことを鑑みると、ワクチンを打っていない子供たちのための団体が足りなすぎると主張する。そして、とりわけ髄膜炎菌感染ワクチンに関しては、「全ての人に等しく予防接種を行うことは、全国民が受ける恩恵より乳幼児に対して重大な副作用効果を引き起こすリスクの方が高い」と付け加えた。一般医は、ワクチン未接種の子供からの市民権剥奪を民主主義の軽視であると主張する。強い伝染力を持つ水痘は、年間20人の死者を出している。イタリア(他9カ国)でワクチンが義務化されているのに対し、フランス保健当局と医師団全体は水痘は軽度の小児病と見なし、ワクチンは未だ検討中の段階にある。この一般医たちは、南半球からの安全だというデータにもかかわらず、2009年から2010年に流行した新型インフルエンザH1N1への対応について感染リスクの過大評価と過剰反応をひき起こし、信頼の危機を招いた当局の責任も併せて指摘している。当時採用された大規模な予防接種の際、一般医が排除されたこと及び(注射針の使いまわしによる)リスクがあるにもかかわらず急いで集団予防接種(注射)を行ったという事実は、科学的専門判断の誤りで、連絡協議体制の失敗が招いた事態であった、と一般医は指摘する。上院は、600万回分しか使われなかったのに対し、政府からは9400万回分の発注がなされていたことを、この時すでに確認していた。その契約は、製薬会社側に有利な「著しく均衡を欠いた」内容であり、「いくつかの条項の合法性が疑わしい」ものだった(10)。ANSM(フランス医薬品・保健製品安全庁)はインフルエンザキャンペーンに使用されたパンデムリックスワクチン(H1N1型インフルエンザワクチン)とナルコレプシー(睡眠発作)の増加との関連性を2013年に立証し、国家賠償の道を開いている。

 過去には次のような事例もある。1990年代のB型肝炎に対する大規模予防接種キャンペーンをめぐる失敗のことだ。病気の危険性を煽るような挑発的で、さらには虚偽をも含む製薬会社の広報によって、それは当局により中学校でも繰り返され、当初対象となった若年層を飛び越え結果国民の3分1が予防接種を受けることとなった。1998年には、副作用観察報告で明らかになった多発性硬化症の増加を受け保健担当大臣ベルナール・クシュネーは学校での予防接種を中止し、持病を持つ成人から接種義務を解除する一方、乳児には継続させた。論争は、法律関連の批評記事を通じて倍加され、収束しなかった。17年にわたる審理の後、2016年3月フランスの法廷はB型肝炎ワクチンに関する審理について棄却を決定した。「確たる因果関係」が欠如するなか、判事は、検察の論告に追従し、過失責任あるいは注意の懈怠をとりあげなかった。この判決に損害賠償請求人たちは「(裁判所に)やる気がないのだ」と嘆いた(11)

 だが、2017年6月21日、欧州司法裁判所(CJUE)は、B型肝炎ワクチン製造元であるサノフィ・パスツール社[世界最大規模のヒト用ワクチン製造販売会社]に対するひとりの硬化症被害者の訴えを受理し訴追への突破口を開いた。判決文いわく「当該ワクチンの投与と被害者が罹患している病気の発症との因果関係について、医学研究によってはその存在が立証も否認もされていないということが確認されるが、原告から持ち出されたいくつかの事実に関するデータは、重大、明確かつ整合的な手がかりを構成し、それはワクチンの欠陥、および上記病気との間に因果関係が存在すると結論付けるに足るものである」(12)。その推定は判事に委ねられるが、破棄院(最高裁)は2017年10月18日、2人の犠牲者が提出した証拠を再び棄却した(13)

 別の事案に移ると、国務院は2012年に、筋肉と関節に悪影響を及ぼす疾患マクロファージ筋障害の症状とワクチンのアルミニウム塩との関連性を特定した。神経と筋疾患の専門家であるロマン・ゲラルディ教授は、この関連性を、特定の人々つまり遺伝的に罹患の潜在性があった人々に見出した。彼の最近の研究は、クリストファー・エクスレイ教授の自閉症との関連性を立証した最新の研究とともに、アルミニウム補助薬(効果を最適化するためワクチンに混入している)の毒性についての議論を再浮上させた(14)

 2017年7月26日、国民議会の政府答弁で保健大臣は次のように回答した。「あなた方は主張するでしょう。副作用が少ない補助薬を開発できるのではないか、と。しかし、現在のアルミニウム補助薬は健康を害すものではありません。どの報告書もそれを証明しています」……。こうして一部の市民が要求していたカルシウム・リン酸塩を主成分とする補助薬研究の道は断たれた。11種の必須ワクチンのうち8種がアルミニウムを含んでいることになる。

 「判事が科学的知見と関係なく最高権力者の役割を演じている(15)」ことに不満を隠せないコラムニストもいる。とはいえ自らを予防接種の被害者と名乗る人々にとって、裁判所のこれらの判決は世間に被害を認知してもらうという意味では希望となった。2014年9月の販売の際、いくつもの製造ロットの欠陥ワクチンが回収された髄膜炎ワクチンを訴えた何百組もの家族の事例がそれだ。家族は子供たちが被った副作用の影響を世の中に知らしめるために奮闘している。2016年7月ANSMの決定(欠陥ワクチンの予防接種を受けた人々にリスクはない)が出た後、重金属微粒子によって悪影響を受けたことを根拠とする鑑定をもとに、彼らは法廷での審問を望んだ。市民の民事、刑事の告訴が行われた。だが、国立医療事故補償公社(ONIAM)は、髄膜炎ワクチンが必須ではないことから、この案件を検討することはなさそうだ。

副作用観察報告の限界

 副作用観察報告の不備が犠牲者の存在を見えにくくしている。とはいえ副作用が例外的ケースで臨床検査での検出が困難である、という実態があるからこそ、観察報告は副作用を告知するのために不可欠な存在なのである。ワクチン技術委員会委員長のダニエル・フローレ教授は述べる。「医薬品の重大な副作用の1~10パーセントが薬物監視地方センターの発表によるものであることは一般に知られている(16)

 独立系の雑誌 Prescrire のディレクターは「副作用と見なされているものは氷山の一角に過ぎない」と確信を持って語る。動機付けや時間の不足、管理負担や係争に対する懸念、[ワクチンと副作用の]因果関係がないという憶測が保健衛生の専門家による申告不足の原因になっているのだ。当局は監視用のシステムを強化し、副作用についてのオンライン・フォームを一般(公衆)向けに用意した。

 ヴェローナ大学病理学教授パオロ・ベラビートが言うように、副作用観察報告には限界がある。というのも、監察報告では「予防接種と時間的に近接した反応については報告されるが、一方で、時間の隔たりがあると、慢性的な炎症性の病気や自己免疫疾患について、それがワクチンによって引き起こされたものか、他の環境や感染要因によって引き起こされたものか判断することが不可能になる、というようなことは十分あり得るからだ」(17)

 ワクチンの種類が多いだけに、長期的な影響が懸念される。製薬業界の最新年次報告書によれば、アメリカの研究所では264種類のワクチンが開発中だという(18)。「それら全ては私たちの健康向上を目的にしているのか、あるいはワクチンを商品化する製薬業界の繁栄のためなのか?」と、リーズ・バルネオウドは疑問を投げ掛ける。2010年にはワクチン技術委員会の社会学者ディディエ・トルニーはHCSP誌に次のように寄稿している。「たとえワクチンの入手が可能で、市場取引の許可があり、それゆえ処方され得るとしても、公共衛生に貢献するものではない、と調査組織が考えているのはさして不思議なことではない」

 予防接種へのバッシングを非難する際には不安に陥らせるような議論を用い、反予防接種派に最大の異論の余地を残しながら、当局は複雑な議論を避けてきた。そして、健康問題に関し立場を明確に打ち出した社会勢力の流れと相反するような動きを見せていた。国家はこうして、自らスキャンダルを引き起こしながらも、決定に際し、私的利害から距離を置く審判の役回りに身を置いている。予防の原則に立ってすべての科学的要素を民主的に検討した後でなければ、ワクチンに対する不信感は拭えないだろう。社会保障予算を巡る膨大な議論の影に隠れワクチン問題は今度の議会では表面的に検討されるのみに留まるだろう。政府が一刻も早く[この問題に]終止符を打ちたがっているのだから……。



  • (1) France Inter, 15 septembre 2017.
  • (2) ジフテリア、破傷風、ポリオ、つまりDTP予防接種に百日咳、B型肝炎、麻疹、おたふく風邪、風疹、B型インフルエンザ、C型髄膜炎、肺炎双球菌予防接種が加わる。
  • (3) Conseil d’État, « M. B... », décision no 397151 sur la vaccination obligatoire, 8 février 2017.
  • (4) Thomas Dietrich, « Démocratie en santé. Les illusions perdues » (PDF), contribution au rapport de l’Inspection générale des affaires sociales sur le pilotage de la démocratie en santé au sein du ministère des affaires sociales et de la santé remis le 19 février 2016.
  • (5) « Concertation citoyenne sur la vaccination : démocratie sanitaire et indépendance mises en question », APMNews, 2 décembre 2016.
  • (6) Pneumocoque, 91 % ; hépatite B, 88 % ; ROR, 78 % ; méningocoque C, 70 %.
  • (7) Philippe Sansonetti, Vaccins. Pourquoi ils sont indispensables, Odile Jacob, Paris, 2017.
  • (8) Lise Barnéoud, Immunisés ? un nouveau regard sur les vaccins, Premier Parallèle, Clamecy, 2017.
  • (9) « Vaccination : comment restaurer la confiance ?», Ordre national des médecins, juin 2017.
  • (10) « Rapport de la commission d’enquête sur le rôle des firmes pharmaceutiques dans la gestion par le gouvernement de la grippe A (H1N1)v », Sénat, 29 juillet 2010.
  • (11) Le Monde, 14 mars 2016.
  • (12) Cour de justice de l’Union européenne, affaire C-621/15, « N. W. e. a. contre Sanofi Pasteur MSD SNC e. a. », arrêt du 21 juin 2017.
  • (13) Cour de cassation, « Santé publique - responsabilité du fait des produits défectueux - Union européenne », arrêts n° 1099 et n° 1101 du 18 octobre 2017. 
  • (14)  Christopher Exley, Andrew King, Matthew Mold et Dorcas Umar, « Aluminium in brain tissue in autism », Journal of Trace Elements in Medicine and Biology, vol. 46, Elsevier, Amsterdam, mars 2018 (en ligne depuis le 26 novembre 2017). 
  • (15) Blog de Jean-Yves Nau, Journalisme et santé publique, 22 juin 2017. 
  • (16) Daniel Floret, « Comment faire de la pédagogie autour du vaccin ? », Actualité et dossier en santé publique, no 71, Haut Conseil de la santé publique, Paris, juin 2010. 
  • (17) Paolo Bellavite, « Scienza e vaccinazioni. Plausibilità, evidenze, deontologia » (Science et vaccinations. Plausibilité, évidences, déontologie), texte adressé aux ordres provinciaux des médecins et aux responsables de la santé publique d’Italie. 
  • (18) « Medicines in development, 2017 report. Vaccines », America’s Biopharmaceutical Companies, 9 novembre 2017.



(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2018年1月号より)