トランプにおもねるEU


セルジュ・アリミ(Serge Halimi)

ル・モンド・ディプロマティーク統括編集長

(仏語版6月号論説)

訳:土田 修



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 エマニュエル・マクロン、アンゲラ・メルケル、ボリス・ジョンソンの欧州指導者三人は、ドナルド・トランプに対して、ご機嫌取りのお願いと愛情表現を示したが、何の役にも立たなかった。米国大統領は三人に対して侮辱することで反撃したからだ。トランプは、3年前に自分たちがイランと締結した核合意を破棄しないのなら、貿易・金融面で報復すると三人を脅している。米国がきれいさっぱり方針を変えたのだから、その同盟国は歩調を合わせるしかない。トランプの目にはフランスもドイツも英国もさして重要ではない。重要なのはサウジアラビアとイスラエルの方なのだ。

 「自分自身に有罪を宣告した者を、人々は常に打ちのめしたがるものだ……彼に残されたほんのわずかな自尊心を粉々に打ち砕くために」とジャン・ポール=サルトルは『自由への道』の中で書いている。この指摘は、例えば欧州連合の国々にも当てはまる。マクロンは「こめかみに銃口を突きつけられて」ものを言うことを拒否した。メルケルは米政府が中東での事態を「より一層、困難にしている」と残念がってみせた。だが、二人のうちどちらも泣き言を口にするだけで[トランプに]反論することさえできないようだ。欧州の大企業は従うべき相手が誰であるのかを知っている。米国のサーバー経由でイランにメールを送っても、ドルを使ってイランと取り引きしても法外な罰金が課せられることになるからだ。

 トランプが自分の意志決定を伝えるやいなや、かつて[国策の]フランス石油会社(CFP)であったトタルはイランへの投資計画を取り消した。とはいえ、同時に、マクロン大統領はイランとの間で締結した協定を維持しようと努力してきた。だが、マクロンはこう述べた。「私ははっきり申し上げます。我々は米国の企業に制裁を加えることも、制裁に対する報復を加えることも考えていません。……そして我々は(フランス)企業に(イランに)残るよう強制することもしません。それがビジネスの現実なのです。フランス共和国大統領はトタルの経営責任者ではありません(1)」。結果として後者(トタル)は米政府の軍門に下った……

 いつも懇願ばかりしているフランスのコメンテーターはこのエピソードから、欧州連合(EU)がもっと影響力を持つべきであると結論づけた(2)。だが、欧州連合が拡大し制度化するにつれ、米国の指令に抗うのが難しくなっている。1980年、欧州経済共同体の9つの加盟国は、パレスチナ人民の民族的願いの正当性を認める方向で中東問題について態度表明した。それとは逆に、先月14日、オーストリア、ハンガリー、チェコ、ルーマニアの4加盟国はエルサレムに移転する米国大使館の開設を祝して代表団を送った。それもイスラエル軍が数十人のパレスチナ住民を殺害したまさにそのタイミングでだった。あえて言うならば、それはまだましなことだ。EU加盟国28カ国中15カ国が米軍についてイラク侵略に荷担したことを考えれば。

 EUは常に意見の一致という基準を強化し続けてきた。だが、トランプが思い出させてくれたことなのだが、常に忘れている基準がある。それはEU加盟国が独立していること、自らの主権を保持していることの必要性だ。



  • (1) 2018年5月17日、ソフィアでの記者会見
  • (2) ラジオ局フランス・アンテルのコメンテーター、ベルナール・ゲッタが、どんなテーマであっても、20年来、毎朝、くどくどと繰り返してきた政治信条

(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2018年6月号より)