イランという標的


セルジュ・アリミ(Serge Halimi)

ル・モンド・ディプロマティーク統括編集長


(仏語版1月号論説)

訳:村松恭平





 2003年2月5日、コリン・パウエル米国務長官が国連安全保障理事会において、炭疽菌を保存できるという瓶を振り、化学兵器が製造されているという秘密の場所の衛星写真について説明していた。この作り話 —— 後に本人がそう認めた —— はその後、イラク戦争をPRするための「発射台」として使用されることになる。2017年12月11日、 ニッキー・ヘイリー米国国連大使がイランのものと称する、標的に達しなかったミサイルの巨大な断片の前に立った。そして彼女は芝居がかった素振りで、それが「G20メンバー」であるサウジアラビアの空港めがけてイエメンから発射されたと主張した。「何の罪もない市民が何百人も殺される恐れがありました。(……)このミサイルがワシントンやニューヨーク、あるいはパリやロンドン、ベルリンの空港を標的としていたらと想像してみてください」。そこまで到達できなかったのは、その兵器の射程距離が問題だったのだろうか? そんなことはどうでもよかった。またふたたび、戦争を正当化するための恐怖をでっち上げる必要があったのだ。イラクを破壊してから14年後、米国政府は今度はイランを標的とした。

 その話がファンタジーならば、ヘイリー氏の想像力の欠如を楽しむことができただろう。2003年には、パウエル氏はサダム・フセインとアル=カーイダの間の「不気味な」関係の存在もまた糾弾していた。昨年11月1日、またしても同じことが繰り返された —— ウサーマ・ビン・ラーディンを殺害した際に米国中央情報局(CIA)がパキスタンで押収した多くの資料が公開されたが、それがビン・ラーディンの後継者たち(スンニ派)とイラン政府(シーア派)の間のあるまじき関係の存在を証明するというのだ。米国政府はアフガニスタンでソ連人と戦った際にビン・ラーディンを支援したこと —— これは真実である —— あるいは、米大統領だったロナルド・レーガンがニカラグアの極右勢力に属する友人たちに資金援助するために、イランに武器の不法輸出をしたこと[訳注1]をすでに忘れてしまったようだ。

 その当時の米国では、誰もそのことを口実に戦争を宣言しようとはしなかった……。翻って今日では、サウジアラビア王国、イスラエル政府、そして多くの米国の政治リーダーたちが一致団結し、イランと激しく戦うことを望んでいる。CIAの次期長官といわれ、影響力を持つトム・コットン上院議員は、そのチャンスをいまかと窺っている。彼の考えによれば、米国政府の外交課題(対イラン、北朝鮮、中国、ロシア、シリア、ウクライナ)は実際、すべて「軍事オプション」を含むという。そして、イランがもたらしている危険性 —— 彼によれば、それは北朝鮮の危険性よりも高い —— は「海軍と空軍による、イランの原子力施設に対する爆撃作戦」によってしか取り除けないという(1)

 バラク・オバマ元大統領は2年前、イランの軍事予算はこの地域の親米同盟国の軍事予算の8分の1、米国国防総省の予算の40分の1しかないと述べていた。だが、いわゆる「イランの脅威」に対し、[戦争の発生を予期する]太鼓の連打音は最も激しくなっている。このような神経戦の局面において、12月18日、フランスの外務大臣はイランの「ヘゲモニー」への意思を非難したが —— それもワシントンにおいて —— 、それよりももっと賢い振る舞い方は、本当に何もできなかったのだろうか?





(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2018年1月号より)