アフガン復興援助で潤うタリバン

ルイ・アンベール特派員(Louis Imbert)

ジャーナリスト

訳:日本語版編集部


 ハッジ・モハマド・シャーには運がなかった。彼は2009年に、アフガニスタン北部クンドゥズ近郊で道路建設を開始した。25キロの道路があれば、シャハル・ダラ県の農民たちはクンドゥズの市場へ作物を売りに行ける。建設費は6万3600ユーロで、アジア開発銀行(ADB)が出した。工事が始まるとすぐ、1人のタリバンがやって来て、工事の発注元である県長老議会に対して上納金の支払いを求めた。道路が完成前に破壊されるのを恐れた長老たちは、1万3900ユーロを払った。やがて2人目が来て、長老たちはこれにも応じた。3人目が来た時は、もう金がないと説明した。すると、2010年3月のある日、シャーが町で昼食を取って戻ってくると、作業員たちが武装集団に人質に取られ、10台の作業機械が燃やされていた。被害額は17万6000ユーロに上る。彼は今日も保険の支払いを求めて奔走していることだろう。

 クンドゥズ州知事のモハマド・オマルは、答えに窮した。長老たちが支払った金額が少なかったのか、袖の下が足りなかったのか、そこまでは知らないからだ。あきらめ顔で、一言こう述べた。「タリバンはここではやりたい放題だ。殺人も、拷問も、恐喝も」。タリバンの指導者がクンドゥズの「影の知事」として、ゆすりの仕組みを広く作り上げているのは、オマルにもよく分かっている。彼らは、道路、橋、学校、病院など、州内の建設工事のほとんどすべてについて、一定の金額を徴収している。アフガニスタンの「復興」が進めば進むほど、タリバンが潤うという構図である。

 「オマル師の資金源は何か」という問いに対しては、よく「阿片」の一言で片づけられる。しかし、国連薬物犯罪事務所(UNODC)が2009年末に発表した報告書によると(1)、阿片(課税や密売)はタリバンの収入源の10%から15%でしかない。

 「資金の大部分は地方ごとに集められている」と言うのは、在カブール米国大使館アフガン危険資金室(ATFC)のカーク・マイヤーだ。「ヘルマンド州(2)の阿片からの資金が、他のとくに貧しい州にどの程度、回されているのかはつかんでいない。タリバンはその一方で、名ばかりの非政府組織(NGO)からの寄付、誘拐、杉材やクロム鉱のパキスタン国境での密輸も資金源としている」

 アブドゥル・カデル・ムジャディディは32歳の技術者だ。1992年の共産政権崩壊後の最初の大統領で現上院議長のシブガトゥラ・ムジャディディの甥である。現在、彼はラグマン州の山岳地帯に7キロばかりの道路を建設中だ。作業機械の周りには、もちろん警備員が張りついている。驚くべきことに、制服を着用しているのは半数で、残りの半数は民族衣装をまとい、あご髭を伸ばしている。というのも、この半数は5万2000ユーロで工事期間中、地元のタリバン幹部から派遣されている者たちなのだ。ムジャディディは笑いながら言った。「たいした額ではない。もし100人の警備員を雇わなくてはならないとすれば、月に1万6000ユーロかかる。タリバンなら8000ユーロで済み、工事現場は安全だ」。彼は4回か5回か攻撃を受けたが、6カ月前からは平穏無事に運んでいる。州知事は御満悦だ。「ハーツ・アンド・マインズ(民意)をつかむ」ことを狙った軍事プログラム、地方復興チーム(PRT)を介して建設費用を出している米国も、こうした事態を放置している。

 このラグマン州の小さな工事現場は例外ではない。4カ月前に退任した公共工事省副大臣のワリ・モハマド・ラスリは、こうした仕組みを擁護する。「私はこれについてカルザイ大統領と2回ほど、2時間あまり話したことがある。道路を完成させれば、交通と商業が発展し、おのずと治安も回復する。タリバンに金を払っているのは既成事実なのだから、茶番もいいかげんにすべきだ」。というのも、現職の大臣にとっても、支援国・機関にとっても、タリバンの力を借りるなどというのは論外だからだ。反乱者どもには一切金を出さない、というのが公式見解である。

安全な輸送のための出費

 恐喝の対象は主に米軍、正確に言えば米軍の下請業者だ。毎月6000から8000の輸送隊が、戦争継続に必要な物資を200前後の基地に運んでいる。品目は弾薬、ガソリン、事務用品、トイレットペーパー、テレビなどだ(3)。輸送の大半は、2009年3月に締結されたホスト国トラック輸送(HNT)という契約の下で、民間企業が担っている。契約総額は21億6000万ドル、2009年のアフガニスタンのGDPの16.6%にも上る。国際治安支援部隊(ISAF)の米国人高官は言う。「下請部門のことは分からない。彼らが安全確保のためにタリバンに金を払っているかどうかは知らない。(・・・)我々は数十億ドルをつぎ込んでいるが、そのうち数百万ドルが反乱勢力の手に渡っている可能性はある」

 ザルグナ・ワリザダはアフガニスタンで輸送会社を経営する唯一の女性だ。スカーフを被らず、1970年代の調度を置いた薄紫色のオフィスに、我々を迎え入れた。米軍が重圧下で働いており、輸送中に攻撃されたトラックへの補償はしないことが、彼女にはよく分かっている。「誰に金を出すべきか。警察か、反乱勢力か、タリバンか。私の関心はそんなところにはない。重要なのは、トラックが通り抜けることだ」。輸送に護衛をつけないことさえある。「なぜそんな必要があるのか。タリバンが安全を保証しているのに」

 「もちろん、タリバンに金を払っている」と肯定するのは、アフガン最大の陸運業者協会を率いるグラム・アバス・アイェンだ。「神にかけて申し上げるが、これはまぎれもない恐喝だ。警備会社の中には、数百キロの輸送でコンテナ1つあたり2000ドルを要求するところもある。この金額の半分はタリバンの手に渡っているかもしれない」

 通行のための交渉はどうするかと言えば、もちろん直接にではない。「ボスは私がヘルマンド州の部族長たちとの協議に行くのを歓迎しないだろう」と言い切るのは、フアン・ディエゴ・ゴンサレスだ、米軍を退役し、現在はアフガニスタンの民間警備会社ホワイト・イーグルを経営している。「警備員の採用は、仲介者を通じて、それぞれの地方で行っている。(・・・)部族長自身やその息子が輸送隊を率いることもある。彼らがタリバンとあまり直接関係していなければ、まあいいほうだ」。彼が使っている道路は、勢力バランスが不安定な地域にあると言う。つまり、相手の軍閥が1人だけだと、通行の安全は保証されない。そのため、多少は相手を選ぶ余地が生まれる。他にも道路はなくはない。それは、オーストラリア系警備会社タックフォースのアフガン責任者によると、「単独で行けば厄介なことになるし、地元支配者の許可がなければ殺される」ようなところだ。同社の場合は、アフガン内務省の勧告に従って、どの道路を誰が支配していると見るのが「適切」かを判断しているという。

 そうした支配者の中で現在、最も力を持っているのはルフラという人物だ。年齢は40歳代で、米軍の責任者とは一度も会ったことがない。民族衣装のシャルワル・カミズを着て、ロレックスの時計をしており、奇妙に甲高い声で話す。カブールからカンダハルを抜け、パシュトゥン地域南部へと至る高速道路1号線の大部分は、彼の支配下にある。手を組んでいるのは、ワタン・グループの所有者で、カルザイ大統領の従兄弟でもあるポパル兄弟だ。彼らの道路では、典型的な輸送隊は、300台のトラックに400人から500人の民間警備員がつく。カンダハル向けのコンテナに対する請求額は、1つあたり最大1200ユーロだ。つまり彼らは、米国下院の最近の報告書によると(4)、米軍の輸送隊を護衛することで「年間数千万ドル」を稼ぎ出していることになる。ルフラもポパル兄弟も、強行突破できない地域でタリバンに金を渡していることは断固否定する。昨年は450人も殉職したとルフラは言う。

 多数の警備会社や輸送会社が再三にわたり、米軍に苦情を寄せている。毎回のように軍閥支配者を頼っていては、あまりに高くつくからだ。しかしながら、米軍に解決策があるわけでもない。

コントロールのきかない札束

 タリバンの資金は、必ずしも武力で得たものばかりではない。ドバイやパキスタンを経由して、湾岸諸国から入ってくる多額の寄付金もある。これを扱っているのは、効率的で目立たない金融業者たちであり、中心地はカブールのセライ・シャザダの両替市場だ。中庭に面した回廊に3層にわたって、じかに床に置かれた木製の帳場が並び、ドル、ルピー、元などの札束が積まれている。往時のパリの中央市場を思わせる人混みだ。アフガン危険資金室の調査によると、アフガン人の96%が、銀行の窓口よりも、こうした両替市場からの送金を好むという。100軒ほどあるブローカー(ハワラ)の事務所の扉をどれでも押せば、そこには取引額の割に狭い帳場がある。焼けつくような革のソファの上で、6人かそこらの従業員がぐったりしている。彼らは夜になると、紙幣計数機で昼間の売上を勘定する。8世紀に誕生したハワラのネットワークを使えば、ごく少額の手数料で、地球の裏側にいる提携業者から、ほんの数時間で数十万ユーロの送金を受けることができる。カブールの両替商組合の代表のハッジ・ナジブラ・アクタリによると、取扱額は1日あたり400万ユーロに上るという。このシステムの基本は信頼関係にある。顧客も保証人も顔見知りなのだ。

 2004年から、政府はブローカーに届出を求め、毎月の取引明細の提出を促している。アクタリは、米国アニメ「トムとジェリー」の映ったテレビを背後に、「毎日、数十人の諜報局員が押しかけて」は、帳簿に目を通していくと言う。捜査員は、ものすごい活況を呈するカンダハルの市場には足を踏み入れない。安全ではないからだ。だが、タリバン資金のかなりは、ハワラのシステムによって送金されているのだ。

 中央銀行の金融諜報室の記録によると、国内に入ってきたサウジアラビア紙幣は、2007年1月以降で13億ドルに上る。若い室長のムスタファ・マスディは言う。「この金はパキスタンの部族地域で目撃されている。誰が一体あそこでサウジ通貨リヤルを必要としているのか、考えてもみてほしい。リヤルはペシャワル(パキスタン北部)からハワラを介してカブールに送られ、そこでドルに両替される。ドルは山の中に消え、リヤルは空港からドバイへと、まったく合法的に還流する」

 カブール空港の警備を担当するモハマド・アシフ・ジャバル・キール将軍にも話を聞く必要がある。誰でも申告さえすれば、数百万もの現金を持ち出せると定めた法律が悪いのだと、彼は猛然とがなり立てた。ドバイの側では、2009年の経済危機に見舞われて以来、金の出所に関するチェックがさらに甘くなっている。ある米国高官によると、昨年カブール空港からアラブ首長国連邦に運ばれた金額は、17億5000万ユーロ以上だという。しかも驚くべきことに、マスディによると、資金移転の大部分はほんの10人ほどの人間、そのほとんどはハワラの業者が担っているのだ。ジャバル将軍は我々にリストを差し出した。人名が腹立たしげにマーカーで塗られている。金額は莫大で、1人は2009年に3億6000万ユーロ、別の者は690万ユーロといった具合だ。

 これらの金がすべてタリバンと結びついているわけではない。合法的な金もあれば、役人が国際援助金から掠め取った裏金もあり、反乱勢力の専売特許とはまったく言えない麻薬資金もある。アリアナ・アフガン航空の貨物室に、ビニールにくるまれた各種の札束が詰め込まれているという事態は、この国が金融をなかなかコントロールできずにいる現状を示すものでもある。昨年の関税収入は6億3600万ユーロにとどまるが、その倍は徴収できるはずだ。税関の責任者で、若く意欲のある副大臣のサイド・ムビン・シャーは、一部の税関事務所を訪れることができずにいる。警察から身を守るには誰に頼ればいいのかと思案しているからだ。多くの警察官が、勝手に税関吏まがいのことを行っているのだ。ムビン・シャーは、スピン・ボルダクの税関事務所では、タリバンと結託しているらしい軍閥の庇護を受けることを考えている。これでは状況は改善しそうにない。

(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2010年9月号)