遠隔操作される死の飛行機

ローラン・シュコラ(Laurent Checola)、
エドゥアール・フリムラン(Edouard Pflimlin)

ともにジャーナリスト

訳:日本語版編集部


 パキスタン軍がワジリスタンでの攻撃を続行する一方で、アフガニスタン国境地帯での戦闘も激化している。タリバンとアル・カイダ幹部を追い詰めようとする米国は、パイロットのいない無人機を多用している。この「未来兵器」はネヴァダ州にある基地から操作され、民間人に多大な被害を与えている。無人機はさらに戦場の枠を超えて、ヨーロッパの都市郊外でも、治安目的で用いられ始めている。[フランス語版編集部]

 2009年8月5日午前1時30分頃、米国の無人航空機から発射された2発のミサイル、ヘルファイヤー(地獄の炎)が、パキスタンの南ワジリスタン地域の辺鄙な村ラッダーを襲った。標的は、タリバンを支援する宗教指導者、イクラーム・ッディーン師の家だった。12人の犠牲者の中には、パキスタンのタリバンのカリスマ的指導者、バイトゥッラー・メヘスードが含まれていた。

 2009年7月22日には、ウサマ・ビン・ラディンの息子の1人、サアドの死が米国高官筋から発表された。ただし、この情報は確認されていない。同年1月1日、アル・カイダの外国作戦を統轄し、1998年のケニアとタンザニアの米国大使館テロの首謀者として捜索されていたウサマ・キーニーが死亡したことに、米国当局は同様に満足感を表明した。「無人機はアル・カイダに大きな打撃を与えている。重要幹部を掃討し、メンバーを部族地域の外に追い立て、作戦能力を削いでいる」と、この地域の専門家であるランド研究所のクリスティン・フェアは強調する。

 ここ数カ月、パキスタンの部族地域では、パイロットのいない無人機(UAV)による攻撃が激しくなっている。無人機は、アル・カイダの戦闘員やアフガニスタンとパキスタンのタリバンなど、あらゆる反乱勢力に対する恒常的な戦争を安上がりに続けている。パキスタンの第一の敵を仕留めたことが、この戦略の際立った成果だと言えるだろう。他にも何人も「価値の高い」標的を片付けている。

 標的を絞った攻撃は、2004年にパキスタンで開始され、相対的な成功を収めてきたが、多数の巻き添え被害がつきまとう。今年に入って空爆の頻度が増え、週1回の割合となった。民間人、反乱勢力、テロリスト集団の幹部を含めた死者数は、9月30日までで432人にのぼる(最も集中的に被害の出た2009年6月と7月だけで155人が殺された)。2008年の同時期には36回の攻撃で317人にとどまる。無人機が最も重点的に投入されているのは、パキスタン西部に位置する南ワジリスタンの山岳地帯だ。ナジール師、メヘスード、そして元アフガン司令官のハッカーニーの名を冠したグループが支配する地域である。

 無人機は、そこから数千キロ離れた米国ネヴァダ州のクリーチ基地から、中央情報局(CIA)が制御する。モニタが所狭しと並び、1台1台にキーボードとジョイスティック(ゲーム用コントーラ)が付いている。パイロットにとって危険のないクリーンな世界での仕事だ。機体は細長い流線型を描き、衛星通信機を格納した前方が膨らみ、両翼は狭く、後部には傾いた突起を備え、まるで不気味な昆虫のようだ。

 このような遠隔操作戦は問題をはらむ。「殺害という戦闘員の『最終行動』を根本から変えてしまう(・・・)。無人機を使った戦争は、平凡なオフィスワーク、ひいてはビデオゲームになってしまったのだろうか。無責任な行動を生み出すリスクを避けるため、国防総省はパイロットを4週間から6週間、戦場に定期的に派遣している(1)」。だが、経済的なメリットからすれば、無責任な行動のリスクは二の次だ。米軍戦闘機パイロットの養成には1人あたり260万ドルかかるところ、無人機パイロットなら推定わずか13万5000ドルで済む(2)。問題はそれだけにはとどまらない。

10倍に増えた武器搭載量

 「2008年夏以降、ブッシュ政権は、パキスタン政府を助けて反乱勢力を制圧する空軍へと、CIAを作り変えることを決定した」と、外交問題評議会の政治学者ミカ・ゼンコは述べる。「CIAの攻撃は秘密裏に行われているため、その効果をめぐる公的な議論が本格的に起こる可能性はない」。しかも、イラクでいくつもの不祥事に関与し、その後にXeと名を変えた米国の民間軍事会社ブラックウォーターが、まったく不透明で違法な状態で、無人機に関わる任務の一部を請け負っているようだ(3)

 無人機のメリットは、その自律性にある。最も多用されているのはジェネラル・アトミックス社製のMALE(中高度長距離型)プレデターである。MQ-1プレデターAは滞空時間が24時間以上と戦闘機に比べてはるかに長く、移動する敵を追跡することができる。後続機も段階的に性能を高め、MQ-9リーパー(死神)は大きさが2倍、重さが4倍(4.7トン)、武器搭載量は10倍に増えた。1機あたり800万ドルかかるが、戦闘機に比べると非常に安価である。最新のジェットエンジンのおかげで、プレデターCアヴェンジャー(復讐者)は、リーパーの時速400キロに対して時速740キロを誇る。

 数年のうちに、米国は多数の無人機を保有するようになった。2002年の167機が、2008年には6000機を超えている。偵察用の軽量機が急増した上に、ミサイル搭載機の数も増えた。2002年に22機だったプレデターは2008年には109機、それに26機のリーパーが加わる。2009年1月の現状報告書によると、2008年の無人機の飛行時間は合計40万時間、2007年の2倍以上に達している。

 米国は無人機に費やす費用を増やし続けている。オバマ政権は2010会計年度に、空軍用リーパー24機と5機のグローバル・ホークの購入をはじめ、無人機の開発と購入に380万ドルを計上している。こうした増額は、軍事予算の大幅増加の一環をなす。米国の軍事予算は2002年から2008年の間に74%増加し、5150億ドルに達した。中でも軍事ロボットの予算は2001年から毎年ほぼ倍増を続け、大規模な軍事ロボット産業を生み出した。

 プレデターは、アフガニスタン南部カンダハルの巨大基地に配備されている。ジョージ・W・ブッシュとパキスタンのムシャラフ前大統領の暗黙の合意に基づいて、パキスタンの基地からも展開されているのではないかとの疑惑もある。「メヘスードの死で、タリバンはガタガタになった。米国とパキスタンは協力態勢を取っている」とイスラマバードの安全保障問題研究センター(CRSS)の所長、イムティヤーズ・グルは解説する。「パキスタン軍は無人機を求め、引き金に手を掛ける可能性を要求した」とランド研究所のフェアも言う。「パキスタンは原則的に、以前のように無人機攻撃に反対はしていない」

 今年度のノーベル平和賞受賞者は、就任からわずか3日後の2009年1月23日、パキスタンの部族地域での攻撃を命じた(4)。最初は北ワジリスタンでの空爆で8人が死亡、その数時間後の南ワジリスタンでの空爆では7人が死亡した。パキスタンでの空爆回数は2008年には1年間で36回だったのに対し、今年は9月30日までで39回にのぼる。「ブッシュはパキスタンに関しては慎重だった。オバマ政権は、問題をより包括的に捉えており、砲撃の面で、ある種の急進化が見られる。彼らは『探索と破壊』を行い、一種の『追跡権』を追求している」と、軍事問題専門家のジョゼフ・アンロタンは述べる(5)

「治安」分野への使用拡大

 米国政府は2008年以降、パキスタンの領土に直接介入できないという理由によって、無人機の広範な利用を正当化しようとした。パキスタン当局に部族地域を制圧する意志あるいは能力がないことに我慢できなくなったブッシュ大統領は、特殊部隊にパキスタンでの作戦展開を許可した。2008年9月、アフガニスタンに拠点を置く米海軍特殊部隊の1隊が越境し、女性と子供を含む約20人を殺害した。パキスタン政府関係者はこの攻撃を厳しく非難し、今後の侵入は一切許さないと示唆した。オバマ大統領は実際にも、この方法を放棄したように思われる。

 したがって、無人機の使用は米軍の将来計画に完全に組み込まれている。無人機はアンロタンが指摘するように「兵士の補助」となるが「兵士の代替ではない」。2009年7月23日に提出された米空軍の報告書によると、空軍は「自律性・調節可能性・持久性を高めた無人機システムを運用できる立場になければならない。そうすることで、軍事力の適応性が増し、規模が適切化され、21世紀の空軍力の実効性が最大化されることになる」。そして「無人機は、従来は人間が遂行していた一連の任務を代替するものと見なされる」と報告書は明言している。

 戦闘機を無人機で置き換えるところまでいくのだろうか。ありうることだ。米空軍の資料は「無人機が将来の戦場の形を変えるだろう」と強調する。考えられる影響はいくつもあるが、それらはアフガニスタン紛争という枠組みを大きく超え出ることになる。将来的には、無人機に核兵器が搭載される可能性もある(6)

 空襲と爆撃、さらには空中戦用の無人戦闘機(UCAV)の計画を開始した諸国もある。ここでもやはり、ノースロップ・グラマン社のX-47B爆撃機の計画などを有する米国が、一歩先んじている。

 さらに、麻薬対策や不法移民対策といった「治安」分野への無人機の使用拡大も、本格的に検討されている。すでにフランスでは、無人機が監視活動に使用されたことがある。たとえば、2008年9月13日から14日に、聖地ルルドを公式訪問したローマ法王ベネディクト16世の安全確保のために用いられた。また最近では、北大西洋条約機構(NATO)首脳会談の折に、小型無人機エルザがストラスブール上空を飛んだ。いずれは民間用の無人機も開発されるだろう(7)

 現時点では、無人機の成果のほどはと言えば、実戦の面でも戦略の面でも考え込まざるをえない。標的を絞った攻撃は、本当に効果的なのか。敵は流血覚悟の派兵をできないのだと、パキスタンとアフガニスタンの反乱勢力の自尊心をかき立てているだけではないだろうか。メヘスードの死後も、2万7000平方キロにわたる部族地域にはテロリストの基盤が残っており、急進化を促すような経済的、社会的条件に変わりはない(8)。そして攻撃は他方でパキスタン国民の恨みを募らせている。ただでさえ為政者の腐敗を非難していたパキスタン世論は、無人機の攻撃によって政府の正当性が損なわれていると見る。世界の大多数の国はオバマの米国に大きな信頼を寄せているが、新大統領のパキスタンでの好感度は、極端に評価の低かったブッシュをかろうじて上回るにすぎない。前出の政治学者ゼンコは言う。「無人機はひとつの方策だ。しかし根深い原因を解決することはできない。それには時間がかかる」

(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2009年12月号)

* 小見出し「『治安』分野への使用拡大」から二つ目の段落「自立性」を「自律性」に訂正(2010年1月4日)