クーデター勃発

モーリス・ルモワーヌ(Maurice Lemoine)

ル・モンド・ディプロマティーク編集部

訳:土田修


 米州機構(OAS)も国際連合も、欧州連合(EU)もオバマ米大統領も、反応はまったく一様だった。6月28日にセラヤ政権を倒し、武力でコスタリカに追放したホンジュラスのクーデターに対し、異論を許さない非難が渦巻いた。国連総会のデスコト議長は、「国民主権によって付与された地位と職責にセラヤ大統領を直ちに復帰させるよう」求め、「国際社会は他のいかなる選択肢も受け入れることができない」と最初から明言した(1)

 来る11月29日の大統領選挙での「再選を企図」し、憲法を改正するという「違憲行為」を犯した「前大統領」の正統性は疑問だとする論調もあったが(2)、これは間違いだ(さもなくばウソだ)。新憲法ができないかぎりは現行の1982年憲法が有効であるため、大統領は次回選挙に立候補することはできず、40万人の署名に基づいた「民意確認」を選挙当日に実施しようとしただけだ。ホンジュラス国民が憲法制定議会の招集を望むか否かを問うものであり、拘束力はない。

 ホンジュラスの憲法には、一切の改正が「禁止」された改正不能条項が定められているという特徴がある。その一つが大統領の再選はないと定めた条項だ(第4条)。「あらゆる国家権力の源たる主権」が原則として帰属するはずの国民に(3)、このような縛りがかけられているのは奇妙なことではないか。セラヤ大統領が追放された理由は、再選問題にとどまらず、憲法の改正を「考えた」からだとされる。実際、彼は3つの重い罪を犯した。中道右派(自由党)出身なのに、国を支配する政治経済エリートと袂を分かった。最低賃金を60%引き上げた。米州ボリーバル代替統合構想(ALBA)への加盟により、ネオリベラリズムとの決別を謳うボリビア、キューバ、エクアドル、ベネズエラなどの陣営に加わった。アメリカ大陸の右派は、このALBAの「もろい環」であるホンジュラスへの攻撃に打って出た。

 ブッシュ大統領は、2002年4月にベネズエラのチャベス政権打倒の企てを支援した。オバマ大統領はといえば、ロベルト・ミチェレッティの軍事クーデターを非難する輪に加わっている。だが、彼が「ホンジュラスの唯一の大統領はマヌエル・セラヤだ」と公言する一方、クリントン国務長官は、コスタリカのアリアス大統領に仲裁を頼むことで、クーデター派に救いの手を差し伸べた。OASとメンバー諸国の左派政権はカヤの外に置かれたかたちだ。

 米政府はセラヤ大統領に対して強い圧力をかけた。国防総省はホンジュラスのパルメロラに、戦略的に重要と見なす軍事基地を持っており、しかもALBAのメンバーであるエクアドルでも、コレア大統領が閉鎖を要請したことで、マンタ基地を失ったばかりだ。在ホンジュラス米大使ヒューゴ・ロレンスは、2008年9月にブッシュによって任命されており、2002年と2003年に国家安全保障会議アンデス問題局長(クーデターが起きた当時のベネズエラを所轄)を務めた経歴の持ち主だ。6月30日付のニューヨーク・タイムズ紙によると、彼はホンジュラスでクーデターが起こる直前、数日にわたって「軍の責任者や野党リーダーら」と会合を重ねていたという。

 アリアス大統領の提案は、国民和解政府を作ること、すなわち、セラヤ大統領を復帰させつつ実権は持たせないことだった。セラヤはこれを拒否した。ミチェレッティも同じく拒否したため、多少は花をもたせた出口を用意したつもりのクリントン国務長官は激怒した。

 米政府は二枚舌を使っているのか。ホワイトハウスと国務省・国防総省の間で方針が割れているのか。もし法治が回復されないなら、もしホンジュラスが暴力の暗黒に落ち込んでしまうならば、オバマ大統領を希望と共感で迎えた中南米で、彼の信用は地に落ちてしまうことだろう。

(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2009年8月号)