コンゴで再燃した資源争奪戦争

デルフィーヌ・アバディ(Delphine Abadie)
アラン・ドノー(Alain Deneault)
ウィリアム・サシェール(William Sacher)

「アフリカの資源」メンバー

訳:日本語版編集部


 2008年11月、北キヴ地方の「反乱」将校ローラン・ヌクンダは、コンゴ民主共和国(旧ザイール、以下「コンゴ」)政府に対し、中国企業との間で結ばれた全契約の再交渉を要求した。このとき彼は、いつもと違って、部族問題を言挙げすることはしなかった。まさに見誤ってはいけない点である。つまり、現在この地域で起きている戦争は、1996-1997年および1998-2003年のそれと同じで、「部族問題」が絡んでいるわけではない。戦争の目的は、この地域の豊かな資源を私利私欲で略奪することにある。コンゴの地下には稀少な鉱物資源が埋蔵されている。タンタルが世界埋蔵量の60%、銅が10%、コバルトが30から40%、ニオブが10%、ダイヤモンドが(カサイ地方だけで)30%。それに世界でもトップクラスの有望な金鉱がある。

 また、国際的な環境規制を背景に、鉛のかわりに錫が電子回路基板のはんだ付けに使われるようになってきており、北キヴや南キヴでは、錫の採掘がコルタンの採掘を上回る勢いだ。金も大いに狙われている。東部ルワンダ国境地帯のキヴ湖の底に眠るメタンガスもだ。

 この地域の鉱物は、小規模グループによって手作業で掘り出され、芋づる式に関係者を潤している。地元の実業家、傭兵、輸送業者、にわか入国管理官、といった者たちが、非合法取引による蓄財に励んでいる。いちばん利益を上げているのは、掘り出された鉱石を最後に受け取る欧米の仲介業者である。というわけだから、武器の取引も盛況をきわめている。取引のルートは鉱物と同じ、ただし方向は逆だ。

 地域に進出している外国企業のうち、武力によるコンゴ資源の略奪から最終的に利益を得ているのはどこなのか、見定めるのは至難のわざだ。ほとんどの企業は子会社を隠れ蓑にして、秘密口座のおかげで調査が及びにくいタックスヘイブン(租税回避地)の仕組みを活用している。こうした不正取引を以前から最も大々的に展開してきたのは南アフリカ企業、メタル・プロセッシング・コンゴ(MPC)だが(1)、だからといって他の外国企業が競争をやめるはずもなく、それが現地勢力間の紛争を煽り立てる構図になっている。

 1998-2003年の「第二次コンゴ戦争」の際には、MPCとカナダ企業バンロが、キヴ鉱工業会社(ソミンキ)の金鉱と錫鉱をめぐって争った(2)。ソミンキ自身もローラン=デジレ・カビラ大統領の勢力と対立していた。「同じ鉱山利権をめぐって、少なくとも3派が争っており、それぞれが別の政治勢力と結んでいる。これが、2003年夏にキンシャサで発足した暫定政府に由来する一連の決定の結果である。それから2年を経ても、事態は透明化に向かうどころか、鉱山地域をめぐる戦争が続いている(3)

 さらに北の東部州では、ウガンダが以前から、相互に対立する現地勢力と手を結び、二股も三股もかけてきた。過去の二つの紛争の際、ウガンダはコンゴ東北部の政治的不安定化を大いに助長して、この地域の「天然資源から利益を得た(4)」。ここには世界屈指のキロ・モト金鉱があり、「第一次コンゴ戦争」のときに、カナダのバリック・ゴールド社が南アのアングロゴールド・アシャンティ社と手を組んで、主要鉱区を押さえている。イトゥリ地方では、カナダ企業ヘリテージ・オイルが、ウガンダ領に食い込んだ石油鉱区を保有している。同地方では数カ月来、ウガンダ反政府勢力である神の抵抗軍(LRA)の指揮のもと、コンゴ反政府勢力が国軍と交戦し、人道支援関係者が撤退せざるをえない状況となっている。

トロントの活況

 東南部のカタンガ地方でも、中国企業の中国中鉄、中国水利水電建設、中国輸出入銀行の進出により、事態は混迷をきわめている。800億ドルの価値があると見られ、各社が狙っていたコンゴ国営鉱山会社ジェカミンの一連のプロジェクトについて、2008年4月に中国勢の90億ドルの出資が決まった。この協定は物議をかもしている。憲法違反だ、中国側にとんでもなく有利だ、公的債務の悪化につながりかねない、透明性に欠ける、といった非難が向けられた。しかしジェカミンの重役を務めるカナダ人のポール・フォルタンは、協定死守を貫いている。

 外国勢が直接的、間接的に(つまり鉱業権の取得あるいは代理店の開設を通じて)天然資源の掌握を進める現状が、交戦勢力や近隣諸国の立ち位置を大きく左右している。進出した外国企業のために、彼らが資源への通路を開いたり、一部の鉱区で治安維持を担ったりするという関係だ。にもかかわらず、多くのジャーナリストが、経済利権については何も調査しないまま、この地域の「部族戦争」を報じているのだ。

 鉱業会社は戦争中は鉱区で採掘ができないかわりに、自社の株価をつり上げる材料として紛争を利用している。コンゴの雲行きが怪しくなり始めた1996年、これらの企業の株価は公式発表のたびに急騰した。とりわけ目覚ましいのが、現地事業が大きく進展していた企業だった。ファースト・クオンタム・ミネラルズ、カタンガ・マイニング(旧バロッフ)、ルンディン・グループといった企業は、1990年代の「一方的不平等契約」の締結後に株価が跳ね上がり、莫大な利益を上げた。「コンゴで起きたのは、のみの市で二束三文で仕入れた安っぽい絵が、実は傑作で、画商にはそれに見合う値段で転売された、というようなことだ」と、経済ジャーナリストのネストール・キセンガは書いている(5)

 こうした投機の動きの中心地が、カナダのトロント株式市場である。カナダ資本でないものも含め、世界の鉱業会社のおよそ60%が上場している。カナダ法は鉱業を非常に優遇している。税制上、大幅な減免措置が採られ、鉱業投資を促すための優遇措置もある。情報公開に関する規制は甘く、証券投機が起こりやすい。鉱業会社の高収益が実際どこから来ているのか、説明を義務付ける措置はなきに等しい。トロント株式市場では2001年から2004年9月の間に、鉱山開発銘柄を売り出しているTSXベンチャー指数が、出来高8億ドルから44億ドルに膨れ上がった(6)

 カナダ政府は、公益擁護という名目のもとに、自国の鉱業会社の海外展開を懸命に支援している。カナダ国民の貯蓄(年金原資その他の諸々の積立金)には、鉱業銘柄の相場との関連性があるからだ。アフリカ大湖地域における横暴や犯罪について多数の重大な事実主張があるにもかかわらず(7)、ここ最近カナダの鉱業会社で、国内の政治的あるいは司法上の問題を懸念するところは皆無である。カナダは鉱業会社にとって、「司法回避地」のようなものとなっている。

 資源産出諸国は近年、世界銀行の主導下で、民間企業に有利な鉱業法を導入している。その際に掲げられている目的は、これらの債務国に国際競争の風を吹き込むというものだ。先進国の過大な消費が、資源ラッシュを正当化する政策を引き起こし、資源ラッシュの後を追って戦争が激化する。こうした現状のもとで、国際機関の舌先三寸の「良き統治」あるいは「企業の社会的責任」といった仰々しいコンセプトは、いかにも現実にそぐわないように思われる。

(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2008年12月号)