契約見直しに乗り出すアフリカ資源国

ラフ・クステルス(Raf Custers)

ジャーナリスト、国際平和情報サービス(IPIS、アントヴェルペン)研究員

訳:清水眞理子


 「経済状況が変わった」。ザンビアの経済学者、ジョン・ルングは書いている。「銅の価格は著しく上昇し、開発協定の改定交渉をするよう、政府に対する市民社会や野党の圧力は強まっている(1)」。銅の輸出世界第二位、コバルト同第三位のザンビアでは、2006年11月の選挙の際、野党が「鉱山への課税は引き上げ、鉱山労働者が払う税金は引き下げよ」と要求した。資源価格の高騰で活況に沸く鉱山部門の富の分配に対し(2)、アフリカ大陸のあちらこちらで、異議が申し立てられている。例えば世界最大のボーキサイト産出国ギニアは、2007年初頭、コンテ大統領の無策に対するゼネストで麻痺した。

 将来有望なことこのうえない。アフリカは、世界のコバルトの57%を産出している。同様にダイヤモンド46%、マンガン39%、燐鉱石31%、金21%、ボーキサイト9%である。2002年以降、資源価格は継続的に急騰している。銅の埋蔵量は、コンゴ民主共和国(旧ザイール)だけで7000万トンだ。8800万トンのチリに次いで、世界第二位。銅の価格は、1トンあたり2003年には1178ドルだったものが、2008年3月には8438ドルに上昇している。亜鉛の価格は184%跳ね上がり、ニッケル170%、錫232%の上昇である。

 しかしながら、アフリカの国家、特に国民は、その恩恵にほとんど与っていない。資源に恵まれた国ぐにが、国連開発計画(UNDP)の人間開発指標で下位に位置していることはよくある。177カ国中ギニアは160位、アルジェリアは104位、国家収入の97.8%を石油輸出に頼るナイジェリアは158位止まりである。

 こうした状況下で、アフリカの資源産出国11カ国(3)は、鉱山企業との契約を見直すことを決定した。1990年代以降、鉱山企業は民営化され、国家は少数株主にとどまるのが一般的となっていた(4)。交渉過程も締結された協定の内容も、利益分配に関する項目も公にされていない。競争入札がない、許認可を随意方式で与える、袖の下が慣行化しているなど、これらの契約は国内法に抵触し、ことごとく締結国に不利になっている。企業の実際の事業費はいつも見積もりを下回り、国家の実際の負担分はいつも見積もりを超え、差額の横領がおいしい利得を生む。

 リベリアが契約見直しの先陣を切った。2005年、サーリーフ新大統領が、ミッタル社による鉄鉱石の採掘条件について異議を唱えた。このインド系大企業が鉱石価格を、独断で決定していたからだ。1年におよぶ討議の結果、ミッタルは市場価格に従うことになった。同社を優遇していた免税措置は廃止された。

 大半が鉱山企業と国家という組み合わせの合弁企業の見直しに着手した国もある。タンザニア、コンゴ民主共和国、ギニアがそうである。ギニアでは、鉱山協定の見直しに関する省庁横断委員会(CIRCAM)が創設された。労組や市民団体の代表も加わっている。2008年4月、政府はCIRCAMに2つの重要な案件を諮問した。ひとつはアメリカ系SCSハイパーダイナミクス社による沖合油田事業、もうひとつはロシア系企業ルサール社のボーキサイト事業である。

 CIRCAMは、アングロゴールド・アシャンティ(正確に言うとその子会社のギニア・アシャンティ)、アルコア・アルカン、グローバル・アルミナなど、他におよそ15件の協定を検討した。最初の検討会の後、現在まで進捗はしていない。

企業の抵抗、世銀の留保

 税制面に第一に取り組んでいる国もある。ザンビアは、法人税を25%から30%に、採掘権料を0.6%から3%に引き上げる構えである。続いて、たなぼた利益税(例外的な収益に課せられる税)が導入される見込みである。その税率は銅の価格とともに上昇することになっていて、価格が1ポンド2.5から3ドルなら税率は25%、3.5ドル以上になると75%になる。こうした新税制により、2008年には4億1500万ドルの追加税収が見込まれている。南アフリカは、採掘権料を導入する意向である。プラチナは2.7%(南アフリカが世界生産の80%を占めている)、金は2.1%、ダイヤモンドは3.7%が予定されている。

 再国有化は、どの国でも検討されていない。にもかかわらず、国家の介入は抵抗を引き起こしている。企業や企業連合が、その先鋒に立っている。ギニアでは、2008年5月20日にクヤテ首相が罷免されているが、アルコアとルサールの「圧力が効いたのだ」と見る者もいる(5)。石油会社SCSハイパーダイナミクスは、既存の契約を維持するために、現地ラジオ放送まで使って集中的なキャンペーンを繰り広げている。

 ザンビアでは、ヴェーダーンタ、ファースト・クオンタム・ミネラルズ、エキノックス、メトレックスのような企業が新税制に異を唱えている。政府と「合法的」に開発協定に調印し、当時は銅の価格が低いなかで開発のために「膨大な」リスクを負ったのに、と彼らは主張する。他方、経営者連盟は、ビジネス環境が悪化してしまうと言い立て、税制や契約条件を変更すれば投資家がおじけづくと主張する。南アフリカでは、税制改革に反対する鉱業会議所が、大胆な理由を述べている。企業はすでに部族社会に対して採掘権料を払っているのに、なぜ新税を払わなければいけないのか、と言うのだ(6)

 今や焦点となっている資源を前に、地域金融機関も無関心ではいられない。世界銀行、アフリカ開発銀行、諸々の地域金融機関は、西アフリカの資源国をカバーする枠組みづくりに着手している。地域レベルの鉱山法ができれば、「『ハゲタカ・ファンド』に対する防御、複雑な商取引に関する交渉能力の向上」の助けになるとする(7)。しかし、鉱山契約の見直しについて国際金融機関がそれぞれ異なる立場を示していることもあって、枠組みづくりの構想はなかなか具体化しない。

 国際通貨基金(IMF)は、契約見直しが対外債務の返済手段になると見ているため、税率が世界で最も低い部類に入るザンビアによる税制改革を黙認した。逆に世銀は、公に支持を表明するにあたって大きな留保を付け加えた。「コンゴ民主共和国で進行中の契約見直しは、国際金融市場にかなりの不安を与え、投資先としての同国の信頼性を損ねるものである(8)」。世銀は、2006年にリベリアが行ったように、同国が世界の専門家の助けを仰ぐことを勧めている(9)。もしそうなれば、資源国の主張は「穏当」なものにとどまるだろう。国際金融機関の及び腰の態度は、これらの機関の出資国には、アフリカにおける経済権益を脅かされかねない者たちがいて、裏で圧力をかけているせいだと解釈すべきなのだろうか。カナダとノルウェーは別として、透明性に問題のない国はほとんどない。

(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2008年7月号)

* 註(5) 文献の日付の書式を修正(2008年10月8日)