EUとの新協定に対するアフリカの不満

ラファエル・トゥシンブル・ンタンビュ(Raphael Tshimbulu Ntambue)
国立学術研究センター研究部長

訳・清水眞理子

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 アフリカ・カリブ海・太平洋(ACP)諸国と欧州連合(EU)間の特恵貿易と開発援助に関する協定は、1963年のヤウンデ協定(第2次まで)、1975年のロメ協定(第4次まで)を経て、2000年には新たにコトヌ協定が発足した。20年間にわたる新協定では政治的側面が重視され、従来の人権尊重、民主化促進に加え、ACP諸国の良き統治(グッドガバナンス)の促進、汚職と不法移民労働の根絶が目標に掲げられている。これに対しアフリカ側から、貿易自由化ばかりを強調したもので、アフリカの現状を理解せず、アフリカが意思決定に加えられていないという不満が沸き起こっている。[日本語版編集部]

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 2000年6月23日に欧州連合(EU)とアフリカ・カリブ海・太平洋(ACP)諸国との間で調印されたコトヌ協定は、まだEU諸国の大半で批准されていないが、両者の協力関係の大きな転換を示すものだ(1)。この協定は、貿易手続きの簡素化のように多くの好ましい条項を含むとはいえ、以下の2つの問題をはらんでいる。

 コトヌ協定はまず、アフリカの開発がEUと同一の段階に向け、直線的に推移するものと想定している。そのプロセスは、一方的な優遇措置(2)の終結、相互の関係の地域単位化、ヨーロッパのモノとサービスに対するアフリカ市場の開放、WTO(世界貿易機関)ルールへの同調による世界経済への統合という4段階で展開するとされる。

 他方、この協定はアフリカに関し、浪費家で無能であり、汚職が横行し、法治国家を欠き、貧しく遅れているというマイナスの一面的イメージを伝えるものとなっている(3)。こうした観点から、もはやEUの援助を自動的には実施せず、経済的および政治的な融資条件を強化し、資金の支払い停止のような制裁手続きを置くという協定内容が正当化されることになった(下記参照)

 そのような見方は偏っていると言える。なぜならアフリカの切り札を無視しているからだ。プロジェクトの策定や実行の際に活用されることのない現地の専門知識、先進国NGOのような潤沢な資金のない現地NGO、アフリカ人の半分以上を養っているインフォーマル部門、銀行融資も多国籍企業の助言も受けずに数千の雇用を生み出している小規模新興企業、外国の横槍でまとまらない地域政治経済の再編といったものが、アフリカにはある。

 その上、EU諸国の援助はもはや自動的には実施されない。援助を継続してもらうには、一連の勧告を尊重し、経済・政治上の実績を出さなくてはならず、しかしそのためには援助が必要であり・・・。評価基準とされているのは、貧困の削減、マクロ経済および産業部門別の政策の有効性(4)、資源利用の効率性、制度改革の進展の度合いといった事柄、すなわち開発協力の支援対象分野そのものだ。アフリカ人に不可能なことをやれと言っているに等しいのではないだろうか。

 協定の適用に関しても、まったく同様に筋が通っていない。ここで提示された特恵は、それ自体が克服すべき障害として立ちはだかっているのだ。この点について、あるアフリカの専門家が次のように語っている。「われわれは関税免除でコンピューターもスポーツカーも原子力発電設備も輸出できる。ただ困ったことに、われわれはこうしたものを生産していない。ヨーロッパにモロコシやキャッサバを輸出してもよいというのは感動的な措置だ。ただ残念ながら、これらの穀類をヨーロッパの消費者は欲しがらない。ヨーロッパで売れそうなもの、それは早生の果物や野菜だが、これらの産品はまさに輸出数量枠の対象となっているのである(5)

 開発協力に関するEUの新しい考え方では、第4次ロメ協定に盛り込まれていた個別協力分野に関する詳細な記述(6)は放棄され、全般的な目標を定める包括アプローチに傾いている。このアプローチは曖昧で、援助する側が多くの選択権をもち、どういった分野が他の分野に比べて緊急を要するかを常時判断することになる。しかし全般的な目標を立てるだけでなく、特定の時期にわたり、優先と判断された事柄について、個別協力分野を設定すべきであった。たとえば、貧困削減を左右する地域間、大陸間の基本インフラに援助資源を集中させない理由があるだろうか。

 コトヌ協定に定められたACP諸国への援助額は240億ユーロに上るが、うち99億ユーロは、146億ユーロであったはずの第8次欧州開発基金(7)の残額である。アフリカ側からすると、この「不履行」がまた繰り返されるのではないかとの懸念がある(8)。予定の4分の1しか支払われない金額を示し、寛大であると自慢して何になるというのか。さらに言えば、7年間で240億ユーロという予定額が、課せられた政治的、文化的、社会経済的な目標全部をカバーするのに十分と言えるか疑問である。

 緊急の課題は、もはや新しい貿易協定を作ることでもなければ、それと並行して後発途上国からの製品輸入をほぼ全面的に自由化することでもない。むしろ生産設備への投資を行い、生産に関わる許認可条件を緩和すべきなのだ。アフリカを発展から国際競争力へと至るプロセスに乗せるためには、電力、電気通信、データ通信へのアクセスという3つの基本条件の充足を支援することが不可欠ではないだろうか。

 さらに「相互の利益となる問題」全般について、開発協力の一貫性と影響について、ACP諸国とEUが行うことになっている政治的対話が、実際にどこまで及ぶのかという点でも疑問の余地がある。

 どのプロジェクト、どの部門に協力するかの選択権を援助側に握られていることが、こうした不安の核心である。したがって、EUがこの世界的な情報社会にアフリカを組み入れるための優先順位の決定に当たり、援助計画の実施前から途中、事後を通じてアフリカ人を参加させることが急務である。そうすれば、彼らは与えられた政策の単なる執行人ではなくなる。アフリカ人がその種の政策に関心を示してきたのは、それが一時しのぎの救命策になるからにすぎず、自分たちの優先順位に合致していたためではないのだから。非民主的な国や、民主化されたものの適切な能力を欠いた国との協力に関し、EU諸国が不安を感じるのは当然だが、だからといってアフリカ社会の参加は協力方針を立てた後になってからでよいということにはならない。

 市民社会に公式な役割を認め、特に現地の専門知識を有効に活用することが必要だ。アフリカ人のパートナーを予算配分決定作業に参加させることは、EUの主権を奪うものではない。反対に、作業の効率を高めることになるはずだ。2002年3月21日に南アのケープタウンで開かれたACP-EU協議会による決議(9)もこの方向に進んでいる。 

 コトヌ協定はさらに、民主主義の原則への侵害が認められた場合、援助を一時凍結するとしている。この手続きや、調査と評価の基準については未定であり、誰かが決めることになる。個々の案件についてACP諸国全般、特にアフリカ諸国が立場を表明できる余地を残すべきだろう。一方当事者のEUが、他方当事者のアフリカに関係する案件について、アフリカの意見も採決もなしに決定や制裁を下してはならない。援助の凍結に関する協議は、EUと違反国の間ではなく、2大グループ間で行われるべきである。

 最後に言えば、あらゆる点で優位に立つEUの評価にすべてが左右される。これはコトヌ協定の大きな欠陥ではなかろうか。こうした疑問を棚上げにしておくのは、アフリカ諸国の偽善と無能さの表れではないのか。一方のグループの寛大さと他方のグループの交渉力の低さの結果ではなかろうか。まとまりのとれたEU15カ国に比べ、その協定相手は雑多な国々により構成されているからだ。アフリカは、コトヌ協定をより完成されたものとするために、再協議を要求すべきだろう。  

(1) アンヌ=マリー・ムラディアン「時代の流れに揺さぶられるロメ協定」(ル・モンド・ディプロマティーク1998年6月号)参照
(2) EUは開発援助のために、ヨーロッパ市場への特恵関税のような一方的優遇措置を与えている。
(3) ジャン=フランソワ・バイヤール、ステファン・エリス、ベアトリス・イブー『アフリカ国家の犯罪視』(コンプレックス社、ブリュッセル、1997年)参照
(4) マリー=ピエール・クロゼ、ドロテ・シュミット「部門別アプローチ−EU開発援助の新手法」(『現代アフリカ』誌193号、パリ、2000年1期、76-89ページ)参照
(5) オマール・シ「アフリカにおけるヨーロッパ協力」(フィリップ・ベローほか編『ヨーロッパ協力の地理経済学−ヤウンデからバルセロナまで・・・』、メゾンヌーヴ&ラローズ社、パリ、1999年に所収)106ページより引用
(6) ロメ協定はインフラ拡充、農村開発、食の安全保障、部門別政策(保健、教育、文化間対話など)に関し、いくつもの個別目標を設定していた。
(7) ACP諸国へのEUの援助資金で、一般予算とは別枠で設けられる。[訳注]
(8) マリー=ピエール・クロゼ、ドロテ・シュミット、マリア・ドロレス・ロペス=カニエゴによる分析「ロメ協定の終焉」(前掲『現代アフリカ』誌193号)参照
(9) ACP-EU 3391/02/fin


(2002年6月号)

All rights reserved, 2002, Le Monde diplomatique + Shimizu Mariko + Saito Kagumi


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コトヌ協定の概要


 2000年6月23日、ベナンの経済首都コトヌで締結されたEUとACP諸国との貿易協定は、両者の協力関係に重大な変更をもたらすものである。これは20年を期間としてACP77カ国とEU15カ国の間で交わされ、5年毎に見直しが図られる。第4次ロメ協定に代わるコトヌ協定は、以下の5つの柱からなる。

  1. WTOルールに従って、自由貿易に基づく世界経済にACP諸国を優先的に統合することをめざす。特に、ACP諸国の輸出収入を保証するSTABEX(農産物価格安定)とSYSMIN(鉱産物価格安定)という価格安定化制度に終止符を打つ。

  2. 援助はもはや自動的に実施されるのではなく、実績(制度改革、資源活用、貧困削減、持続的発展に向けた方策など)に左右される。各国につき、国家協力戦略に基づく援助計画に見合った援助予算が計上される。

  3. 協定の主要目標である貧困対策は、各国の政治(地域協力)、経済(民間部門の開発、構造改革、産業部門別改革)、社会(若年層、機会均等)、文化、環境の諸側面を組み合わせたものとする。

  4. プロジェクト実施の際には、現地の経済、社会における関係者や市民団体の参加を拡大するよう、関係する住民に情報を与え、意見を求めなければならない。

  5. 相互の利益となる問題についても、ACP諸国の国家、地域、全体レベルの問題に関しても、必ず「政治的対話」を行う。人権侵害や汚職が認められた場合に関しては、援助の中断などの手続きが定められる。

[訳・清水眞理子]


(2002年6月号)

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