小火器はいかにして紛争地域に流れ込むか

スティーヴ・ライト(Steve Wright)
オメガ財団理事長、マンチェスター

訳・ジャヤラット好子

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 紛争激化の要因に小火器があるということに国際社会はようやく眼を向け、特にその「不正流通(1)」に着目するようになった。小火器取引は人々を脅かし、なかでもアフリカの人々にとって(2)現実の脅威となっている。ここで、国家の規制を逃れて売買されている小火器のほとんど全てが、もともと合法的に製造され、取引されたものだということを忘れてはならない(3)。武器を「合法的」に取引する一方で、「非合法」市場を維持するために、欧米諸国は二つの手法を活用している。一つは仲介であり、もう一つはライセンス生産である。

 仲介業の仕事は、買い手、売り手、運び手、出資者、保険屋を集めて、武器や弾薬の輸送をアレンジすることだ。武器が仲介地を通過することはなく、仲介業者が武器を手にすることもないから、国家規制は容易にすり抜けられる(4)

 欧州連合(EU)の場合、政府の発注状況を見る限り、武器業界は低迷している。その一方で、武器の製造は世界的に拡大している。小銃では米国のM16、ベルギーのFAL、ドイツのG3、ロシアのAK-47、ロケット発射砲ではロシアのRPPG-7、軽機関銃ではイスラエルのUZI、英国ヘッケラー&コッホ(H&K)のMP5など、多くの武器が国外でライセンス生産されているからだ。

 小火器製造国の数は1960年から99年の間に2倍になり、メーカーにいたっては6倍になったという(5)。東欧諸国では、備蓄品を北大西洋条約機構(NATO)の規格に合わせるために、ワルシャワ条約規格の小火器を(世界の紛争地域に向けて)放出している(6)。最近の調査によれば、64カ国に広がる385の企業が小火器や弾薬を製造しているという(7)。しかしながら、この種のビジネスは秘密のベールに包まれており、推定値は現実をかなり下回るものと考えざるを得ない。

 企業の数が増えたのは、一つには旧共産主義諸国の武器メーカーの分社化や民営化の結果である。これらの小規模工場の製造量に関する情報はほとんどない。政府への報告を義務付けているのも米国だけだ。米国務省によると、96年から98年の間に輸出された小火器、弾薬および備品は総額15億ドルにのぼる。その内訳は火器が160万丁、榴弾がほぼ20万個、弾薬が20億個以上となる(8)

 しかし、武器のメーカーと製造国が急増した最大の原因は、ライセンス契約による生産技術の移転にある。つまり、ある国のメーカーが別の国のメーカーに対し、自社製品の複製を許諾するということだ。一般的に、こうした契約では詳細な技術情報が渡される。オリジナルと同じ「規格認証品」を機械的に製造できるように、ソフトウェアが提供されることも多い。ライセンス生産は、なにも目新しいコンセプトではない。1889年のベルギー国営FN社の設立も、国軍向けドイツ式モーゼル銃のライセンス生産を目的としていた。

 国外ライセンス契約を結んだ国は、60年から99年の間に14カ国を数える。ライセンスを受けた工場は46カ国にまたがっていて、ほとんどが開発途上国である。そのうち16カ国(ブラジル、チリ、エジプト、インド、イラン、インドネシア、北朝鮮、韓国、パキスタン、シンガポール、南アフリカ、トルコなど)は、契約の範囲内との名目で製造した武器を輸出しているが(9)、実は契約書の文言に矛盾するというケースが多い。

 武器メーカーは責任逃れにかけては最高のエキスパートだと言える。ここに三つの実例がある。武器メーカーはいかにして、国家がかけた網をかいくぐり、98年6月にEUが採択した「行動規範」のような規制を逃れているのか。

トルコ経由インドネシア行き

 第一の例では、世界的に知られた武器メーカーH&Kが主役となる。同社の小銃G3(7.62ミリ口径)はおよそ40の軍隊で採用され、12カ国でライセンス生産されている。H&Kは91年以降、ロイヤル・オードナンス(RO、ブリティッシュ・エアロスペースの子会社)の傘下にある。

 H&Kほどの武器メーカーが不正取引を行うはずはない。それなら何故、91年に国連が旧ユーゴ諸国に対する武器輸出禁止を決めたにもかかわらず、ボスニア・ヘルツェゴヴィナやセルビアの戦闘員たちはH&Kの軽機関銃MP5 を手にしていたのだろうか。

 事情は複雑に入り組んでいる。91年まで、ユーゴへの武器輸出を禁じていたのはドイツだけだった。H&Kの説明によれば、見つかった武器は、ノッティンガムにあるRO傘下の小企業が、87年以前に製造していた製品である。しかし「MP5がどれだけエンフィールド(ロンドン近郊)に出荷されていたかわからない」と言う。ROのある広報担当者は「H&K英国社がユーゴスラヴィアへ武器を引き渡したことは一度もない」と説明する。そして「弊社は女王陛下の規制をつつしんで遵守し、輸出先は認可地域に限定している」と言う。しかし、彼は付け加えて言った。「第三者の手に渡ったものにまで責任を負うことはできない」。幼稚な方便だ。

 ブリティッシュ・エアロスペースに言わせると、旧ユーゴの戦闘員がH&Kの武器を手にしていたとしても、それは「91年にROがH&Kを買収する前のこと」だ。それでは91年の合併以前は両社の組織は完全に無関係ということになり、誠実な説明とは言えない。仮に両社が手続き上の違反はしていないとしても、武器が紛争地域に流れたことは紛れもない事実である。この例では、英国とドイツの規制の食い違いを利用して禁輸措置をかいくぐるために、もってまわった流通ルートが作られたのだ(10)

 第二の例はトルコの国営企業MKEK(化学・機械)である。同社はライセンス契約の下、小火器と弾薬を幅広く製造している。ライセンスのほとんどは、複数の備品や装備にかかわる非常に複雑な形をとる。例えば92年に、フランス企業GIATインダストリーズと交わした契約がある。GIATは、(米国企業FMCと共同で製造する)兵員輸送用の装甲車に搭載する砲身と砲塔の納入業者である。この契約書には2900万ドル分の相殺条項が付属しており、GIATはそれに従って、25ミリ口径弾薬の生産技術をMKEKに提供した。

 MKEKは、H&Kの小火器各種もライセンス生産している。98年にH&Kと10年間のライセンス契約を交わし、5.56ミリ口径の小銃HK33を20万丁、国内生産することを認められている。ドイツなどの諸国がトルコ向け輸出の条件として人権尊重をうたっているにもかかわらず、トルコはこの契約により、小火器を独自に国内生産できる手段を手にすることになった。

 トルコによるライセンス生産は早期に実を結んだ。98年7月、MKEKがMP5軽機関銃500丁をインドネシア警察に供給することが報じられた(11)。東ティモールで知れわたったインドネシアの特殊部隊が使用していたのも、同じH&KのMP5だった。97年に放映された英国のドキュメンタリー番組に、コパススがMP5を用いて訓練する場面が収められている(12)。それが96年にノッティンガムの工場で製造されたものであることをブリティッシュ・エアロスペースは最終的に認めた。しかし、英国政府の公式発表によれば、該当する輸出許可を与えた事実はなく、そのような記録もない。97年、新たに政権についた労働党は、インドネシア向け軽機関銃の輸出申請が4件、計366丁分あったことを報告しているが、うち3件は不許可、1件は申請取り下げになったという。

 それからほどなく、MKEKがインドネシア警察への同型武器供給の事実を公表した。99年9月には、英国の別の番組が、500丁のMP5をインドネシアに送り出すMKEKの姿を捉えている。この頃、東ティモールの虐殺は最高潮に達していた(13)

 EUはインドネシアに対して禁輸措置をとっていたから、これらの武器をH&K英国社やドイツ社から輸出することはできなかった(14)。他方、トルコはNATO加盟国であってもEU加盟国ではないから、何もためらうことはない。EUは、現行の「行動規範」に傷を付けたくなければ、加盟候補国に要求する「EU並み」を武器についても求めるべきであり、彼らに規制を実施する能力があるかを数年にわたって見極めるべきである。

再輸出を規制せよ

 米国企業のコルト・マニュファクチュアリングは、現在H&Kの買収交渉をすすめている。ライセンス生産を規制する米国法の下、コルトがいかにH&Kを取り込んでいくのかは、軍事専門家の注目の的となるだろう。

 この動きは、スイス企業ブラッガー・トーメにとっては面倒なことになるかもしれない。同社はトルコでMKEKがライセンス生産したH&KのMP5を買い付け、これにサイレンサー(消音器)を付けて売っている。購入者を安心させるため、同社の宣伝パンフレットには、サイレンサーや火器にスイス政府の許可は現在のところ不要との但し書きが付いている。

 第三の例はパキスタン・オードナンス・ファクトリー(POF)、86年時で従業員およそ4万人を抱え、年間売上3000万ドルに達する国営企業だ。その輸出額は近い将来、1億5000万ドルに届くと見られている(15)。同社もまた、H&Kの各種機関銃と並んで小銃G3とMP5をライセンス生産し、さらにラインメタルの機関銃MG3やROの105ミリ口径の対戦車砲弾も製造している。

 パキスタンのある武器製造業者に言わせると、ドイツのラインメタルがPOFと手を結んだ主な理由の一つは、ユーザー証明がPOFによって発行されることで、クウェート向けに武器を輸出できるからだという(16)。ドイツの法律は確かに中東への武器輸出を禁じているから、パキスタンは簡便で合法的な抜け道となる。我々が得た情報によれば、ドイツ各社が中東で取った契約は全てPOFに回されている。そこにもまた、最終仕向け地を目ざすメーカーの策略があるのだ。

 POFには数々の怪しげな契約の噂がある。例えば89年3月、ビルマ軍事政権に対して機関銃150丁、120ミリ口径の迫撃砲の砲弾5000個、それに弾薬5万個を売却したという。疑惑の中には、英国企業ライトウェイト・アーマーを介したケニア向けのG3小銃の輸出が含まれているが、同社は一切のコメントを拒否している。スーダン向け対人地雷の商談もあったらしい(17)

 厚顔無恥な企業の行動が政府によって促されている現状を改めるには、規制の「穴埋め」が必要だ。武器のライセンス契約は直接輸出の場合と同様、国家の輸出規制に従わせなければならない。

 EUの「行動規範」が現実に機能するためには、それを遵守させる各国の法律がなければならない。直接輸出を認めていない国に対しては、ライセンス生産も禁止すべきだ。再輸出を規制し、不正行為を罰する必要がある。最終仕向け地に関する規制を設け、ユーザー証明のでっちあげによる売買規制の回避を阻止するために、国際社会は力を合わせなければならない。

(1) この問題は、2001年7月9日から20日にニューヨークで開かれる国連会議で正式に取り上げられる予定である(http://www.un.org/Depts/dda/CAB/smallarms/)。
(2) ベルナール・アダム「武器は軽火器、破壊は大規模」(ル・モンド・ディプロマティーク1998年4月号)および、Elizabeth Clegg and Andrew McLean, Towards Implementation of the Southern Africa Regional Action Programme on Light Arms and Illicit Trafficking, Institute for Security Studies, Pretoria.
(3) 本稿は以下の論文に強く触発された。Lora Lumpe (ed.), Running Guns. The Global Black Market in Small Arms, Zed Books, London , 256 pp (http://www.nisat.org).
(4) 仲介メカニズムの詳細については以下を参照。Brian Wood and Johan Peleman, 1999, The Arms Fixers. Controlling the Brokers and Shipping Agent, Basic/Nisat/PRIO, Oslo (http://www.basicint.org) また同じ著者の chapter VI of Running Guns, op.cit. : << Making the Deal and Moving the Goods : the Role of Brokers and Shippers >>.
(5) See Pete Abel, chapter IV of Running Guns, op.cit. : << Manufacturing Trends Globalising the Source >>.
(6) Eastern Europe's Arsenal on the Loose : Managing Light Weapons Flows To Conflict Zones, BASIC Papers, No.26, May 1998.
(7) Running Guns, op.cit.
(8) US State Department, Foreign Military Assistance Act Report to Congress, Fiscal years 1996, 1997, 1998 (http://www.nisat.org).
(9) Pete Abel, op. cit.
(10) Pete Abel, op. cit.
(11) アナドル(トルコの通信社)1998年7月25日付
(12) Making A Killing and Profit Before Principle, broadcast by Channel Four, London, 2 and 9 June 1997.
(13) << Licensed to kill >>, Channel Four, 9 December 1999.
(14) ブリティッシュ・エアロスペースは、MKEKとのライセンス契約は91年のH&K買収に先立つという。とはいえ、その後も同社はMKEKに対し、製造方法、技術サポート、ノウハウなどの提供を続けている。それに、最新のHK33ライセンス契約は、98年に取り交わされているのである。
(15) << POF : The Hidden Giant >>, Military Technology,, Bonn, September 1986.
(16) Pakistan Serves as German Arms Export Front, Middle East Defense News, Paris, 20 January 1992.
(17) << Licensed to kill >>, op. cit.

参考

(2001年1月号)

All rights reserved, 2001, Le Monde diplomatique + Jayalath Yoshiko + Yoshida Toru + Saito Kagumi

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