『ル・モンド・ディプロマティーク』 日本語・電子版

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記事一覧

    (日本語版2021年3月号)

  • 🆕コロナ禍でもマテ茶を回し飲みするアルゼンチン人     
    ホセ・ナタンソン
    アルゼンチンでは国民的な飲み物であるマテ茶を回し飲みする習わしがある。コロナ禍で、政府や保健衛生当局からの警告にもかかわらずこの風習は止まない。儀式にも似たこの風習には喫飲者間の信頼関係を確認する意味があるという。翻って、アルゼンチンの人々にはフィジカルコンタクトによってお互いの愛情や親近感を表す傾向があるとの興味深い分析も示す。


    (日本語版2021年2月号)

  • 🆕レバノン、困窮する外国人メイドたち     
    マドレーヌ・ローラン
    レバノンで家庭内の仕事のために雇われている家事使用人、いわゆる「メイド」はその多くが東アジアや東南アジア、最近ではアフリカのサハラ以南の地域の出身者だ。彼女らは「カファーラ」と呼ばれる制度によってスポンサーにあたる雇い主の監護下に縛り付けられ、虐待を…


  • 🆕先史時代の女性を闇から救い出す
    マリレーヌ・パトゥ=マシス
    全世界的に男女平等、女性の社会進出が目標とされて久しいが、昨今のニュースを見渡せば到達には程遠い。本記事は「かつて母権制は存在したのか?」「男性優位の社会はいつ生まれたのか?」を議論の中心に、先史時代まで遡り、歴史的・科学的根拠を織り交ぜながらレヴィ=ストロース等19世紀~20世紀の欧米知識人による考察を紹介する。


  • 🆕女性の平和構築従事者を和平交渉の席へ
    サナム・ナラギ・アンデリーニ
    紛争の被害を受けた地域やコミュニティに対し、女性の平和構築従事者(ピースビルダー)が果たしてきた役割は非常に大きいにもかかわらず、彼女たちの存在は和平交渉の場で無視されてきた。その声がなぜ重要か、平和構築における女性の参画に向けて活動してきた筆者が語る。


  • 🆕英国王室は安泰か?  ―― 財源からスキャンダル、ナチスとの関係まで
    ルシー・エルヴェン
    数々のスキャンダルにもかかわらず、3分の2に近い英国人が王室の存続を望んでいる。現代の英国王室がもつ意味を政治との関わりかた、メディアを通しての国民との関係性、収入源から解説する。


  • 🆕瘴気と若い女性  ―― 19世紀、禁じられた入浴と香水戦略
    エリカ・ヴィキ
    「入浴」は古代エジプトの時代から存在するが、中世の西洋世界ではキリスト教の影響によりこの習慣が姿を消すことになる。とりわけ若い女性は入浴を禁止され、香水を使うこともできず、その「生来の匂い」を発することが望まれた。19世紀になってようやく彼女たちにも香水を勧める風潮が…


  • 🆕消費者の誕生  ―― 広告文化と消費社会
    アントニー・ガルーゾ
    この200年間で市場経済が生み出した新しいタイプの人間、それは「消費者」だ。かつては自給自足的な暮らしをしていたわれわれは、いかにして消費を行わなければ気が済まない生きものに変貌したのだろうか。とどまるところを知らない消費欲を掻き立てるのは…


  • 🆕次の敵は誰か?(仏語版1月号論説)
    セルジュ・アリミ
    北大西洋条約機構(NATO)のアナス・フォー・ラスムセン前事務総長は正月を待つことなく、新年の挨拶状を出した。その中で彼はドナルド・トランプ氏の退任後直ちにNATOが遂行すべき任務についてこう述べている。「2021年に米国とその同盟国はひと世代に一度しかないチャンスに恵まれるだろう…」


    (日本語版2021年1月号)

  • 翳りの見えるフランス文化外交  ―― 統合アンスティチュ・フランセ構想の頓挫とその後の中央主導態勢
    パスカル・コラザ
    フランスは自らの文化と言語を世界に普及することに力を入れてきた文化外交の国として知られる。しかし19世紀後半にアリアンス・フランセーズを設立したことに始まるこの政策は、現地組織の自律性との調整をどう図るかなど多くの問題を抱え、その方針に紆余曲折を繰り返してきた。


  • カフカス地方のロシアとトルコの抗争  ―― 旧ソ連地域を襲うトルコ
    イゴール・ドラノエ
    カフカス地方のナゴルノ・カラバフを巡って、トルコとロシアはそれぞれアゼルバイジャンとアルメニアの後ろ盾となって対立している。シリア、リビアに次ぐ、両国間の新たな抗争である。旧オスマン帝国の勢力圏回復の夢を追うかのごときトルコの動きに、ロシアも自国の緩衝地帯である旧ソ連地域を侵されるわけにはいかない…


  • 米大統領選に見る民主党の苦い勝利
    セルジュ・アリミ
    今月20日、米大統領に就任したジョセフ・バイデン氏の最初の閣僚人事(外交、財政、環境)は、米政府の根本的な変化を望む人々を失望させかねないものだった。民主党はかろうじて「トリプルブルー」(大統領選挙での勝利と上下両院での多数は確保)を達成したが…


  • トランプ後も生き延びるトランプ主義  ―― バイデン勝利 だがアメリカの分裂はいまなお深い
    ジェローム・カラベル
    ジョー・バイデンは、民主党と連携し、自らの政策を方向転換する必要がある。中道主義とビッグ・マネーによる支援から脱却し、恵まれないアメリカ人へと重心を移し、トランプが約束しながら実現を反故にしたことすべてを庶民に提供することが必要だ。


  • 韓国人女性たちの反乱  ―― 新しい世代のフェミニストたち
    フレデリック・オジャルディアス
    現代的な都市の外観と最先端の技術力というイメージとは裏腹に、韓国社会には男性優位の文化が根強く残り、女性は家族に献身的に尽くすことが求められる。2020年10月、韓国政府は人工妊娠中絶を認める法案を提出した。しかしながらその法案は…


  • ポストコロナの新たな旅のあり方  ―― 脱グローバリゼーションに向けて
    ロドルフ・クリスタン
    現代社会において、観光を目的とした旅行は余暇のための人気商品である。しかし、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的流行によってこの産業が減速した今こそ、資本主義の突き進める商業的な観光から脱却すべきであり、地域独自の文化や自然の多様性を…


  • アルバニア、漂流する「優等生」  ―― 30年間のネオリベラリズム政策で廃墟と化した国
    ジャン=アルノ・デランス & ロラン・ジェスラン
    1997年の暴動の後「破綻した国家」とみなされていたアルバニアは、今日ではバルカン諸国の安定の柱として紹介されている。しかし「過渡期」というラベルをはがしてみると、マフィアと結託した政権による権威主義的なネオリベラリズムによりボロボロになった国の実情が…


    (日本語版2020年12月号)

  • 森の中へ 地球最後まで残り時間はわずか  ―― 世界の森の半分近くはもう切り倒されてしまった
    ジョン・バード
    新型コロナウィルス蔓延下のロンドンのヘイワード・ギャラリーで、展覧会『木々の間で(Among the Trees)』が2020年10月30日まで開催された。ロックダウンによって移動の自由を制限され、庭でのお茶でさえ恵まれた人々だけが楽しめるささやかな贅沢となっている中…


  • ホビットの理想的な世界  ―― カトリシズムからウィリアム・モリスまで――J.R.R.トールキンの影響
    エヴリン・ピエイエ
    1955年に完成したJ.R.R.トールキンの『指輪物語』三部作は、半世紀後、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作として映画化され、世界中で今なお1億5千万部が売られている。現在に至るまで人々を引き付ける魅力の源泉は、著者トールキン自身の信条、すなわち…


  • サルトルの拒絶  ―― 抹殺された哲学者の肖像
    アンヌ・マシュー
    1980年4月19日、ジャン=ポール・サルトルの葬儀には、その約1世紀前に没したヴィクトール・ユーゴーの場合と同様に群衆が押し掛けた。サルトルの死とともにアンガージュマン(知識人の政治・社会参加)の時代は幕を閉じたかのようだ。


  • 誰がソ連の負債を支払ったのか?  ―― エリツィンが下した決断の重さ
    エレーヌ・リシャール
    ソ連が解体した時、ロシアは700億ドルに上るその対外債務を引き継ぐ選択をした。幾度もリスケ(金融団との協議による債務の返済条件等の組替え)を繰り返しデフォルト(支払い不能)にも至ったが、その債務は結局どのようにして支払われたのか…


  • 仕掛け爆弾(仏語版11月号論説)
    セルジュ・アリミ
    コロナ禍による公衆衛生・環境・経済・社会的な苦悩に見舞われているフランス社会は、そのうえ相次いで発生するテロ攻撃に見舞われている。そんな時に、「これは戦争だ」と言って社会を焚きつけようとする人たちがいる。それはいつか辿った道のりと同じだ。だが、敵は往々にして姿が見えにくく…


    (日本語版2020年11月号)

  • 米中5G戦争の舞台裏
    エフゲニー・モロゾフ
    第5世代移動通信システム5Gの普及が始まろうとしている。5Gで世界をリードするファーウェイ(華為技術)を標的として制裁を繰り出すトランプ政権と、技術覇権の確立を最重要課題とする中国のあいだの攻防は激しさを増すばかりだ…


  • 中央アジア、新たな時代は来るか  ―― 厳重な監視下にある政治と経済の発展
    マルレーヌ・ラリュエル
    中央アジアのほとんどの国は、ソ連からの独立後、数十年に渡ってたった一人の独裁者の統治下に置かれてきた。初代大統領の世代交代が起こりつつある今、時代が変わろうとしている。継承か、自由化か、後継者の手腕が試される時だ。人口の半数が…


  • 西洋的価値観かイスラム伝統主義か、揺れる中央アジアの若者たち
    マルレーヌ・ラリュエル
    人口の半数が25歳以下の中央アジアは、世界でも最も若い地域の一つだ。その中で平均年齢が最も高いカザフスタンでさえ、1991年の旧ソ連からの独立後に生まれた人口が51%を占めている。「ミレニアルズ」世代と「ジェネレーション Z」世代の急激な増加とともに…


  • 下水の意外な利用法  ―― 下水道は衛生監視人
    モハメド・ラルビ・ブゲラ
    人間の生活排水を運ぶ下水には、細菌やウイルスに関するものなど保健衛生上の貴重な情報が豊富に含まれている。個人からサンプルを採取する場合に求められるプライバシー保護などのプロセスを経ることなく、広範囲で多様な情報を継続的に収集できる利点が近年注目されている。


  • 神経性食欲不振症という社会の病  ―― 患者の大半は裕福な若い女性
    クレール・スコデラロ
    一般的に「拒食症」と呼ばれる神経性食欲不振症は、裕福な家庭の10代女性に現れることが多い病気で、最悪の場合死に至るまで食物の摂取を制限する食行動の異常のことである。行き過ぎた体重管理が彼女たちを捉えて離さなくなる原因は一体どこにあるのだろうか。


  • 活発な政治活動を行う韓国福音教会
    姜仁哲(カン・インチョル)
    韓国では無宗教者が国民の過半を占める中、プロテスタントが朝鮮戦争期、さらに1960年代からの産業化進展期以降、勢力を伸ばしてきた。2000年代以降は保守化傾向を強めるとともに政治活動を積極化し、反共、親米、北朝鮮との敵対を基本理念に、「霊的戦争」論に裏付けられて反イスラム、反同性愛…


  • 見せかけの独立(仏語版10月号論説)
    セルジュ・アリミ
    2020年9月4日金曜日、ホワイトハウスでは、わずか1分ほどの出し物が演じられた。金色に煌く室内装飾に取り巻かれ、たくさんのテレビ電話が置かれた豪華なデスクに鎮座するドナルド・トランプ大統領、その両脇に置かれた教室机のように質素なデスクにはセルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領とコソヴォのアブドゥラ・ホティ首相が座っている…


    (日本語版2020年10月号)

  • リビア、ロシアとトルコの草刈り場
    ジャン=ミシェル・モレル
    2011年、カダフィ大佐による独裁政権が崩壊した後、大混乱に陥ったリビアは、相争う国内勢力によって3つの地域に分断され、諸外国の介入を招く。いわばリビアの「シリア化」が進行するなかで、とりわけ、オスマン帝国の栄光への憧憬を隠さないトルコと、アフリカに軍事的な足場を築きたいロシアが…


  • フランス・アンテール(「読者の手紙」欄より)
    本紙8月号のダヴィッド・ガルシアのフランス・アンテールの調査記事(日本語版では9月号に「フランス・アンテールのお好み」として掲載)には、多くの反響があった。読者からの2つの投稿を紹介する。


  • 黒人の貧者がミネアポリスで生きるということ  ―― ジョージ・フロイドの死が顕わにしたアメリカの不平等
    リチャード・カイザー
    無抵抗の黒人男性に対する警察の暴力の現場を生々しくとらえた衝撃的なビデオがオンラインで拡散したことで、全米を揺るがす抗議運動を生んだジョージ・フロイド殺害事件。現場となったミネアポリス在住の著者が、事件の背景となった、特定のグループの人々を「処分可能」とするシステムのありようと、社会の認識、それを体現し…


  • アフリカ美術工芸品の返還論争
    フィリップ・バケ
    極東の美術館や博物館の常設展示でも、アフリカ美術に触れることができる現在、エマニュエル・マクロン大統領はアフリカの文化財を現地に返還することを決定した。だが、フランス美術業界からは反対の声が上がり、かつて植民地支配を受けた国の方でも受け入れ態勢が十分とは言えない…


  • 米国政府における復活(仏語版9月号論説)
    セルジュ・アリミ
    2008年にバラク・オバマ氏が中道派のベテラン政治家ジョセフ・バイデンを自らの副大統領候補に指名したのは、慎重さを重視した結果のように見えた。民主党はイラク戦争に反対する進歩派の黒人であるオバマ氏をジョージ・W・ブッシュ氏の後継候補に選出することで急激な変化を表明していたからだ。今年11月…


  • サンチャゴからパリまで、収まらぬ大衆の抗議行動  ―― 年金改革、汚職、生活費……
    セルジュ・アリミ
    ネオリベ機構とその支配者に対する大衆抗議行動の第3または第4の波が既に訪れているのだろうか? ベイルートやサンチャゴ、もちろんパリでも、何はともあれ各国政府は暴力的な手段に訴えているが、状況を立て直すことができそうにない。


  • 実りをもたらし続けるバッハの遺産
    アガト・メリナン
    「音楽の父」と呼ばれるバッハの音楽は、1750年に彼が死んで以降、メンデルスゾーンによる1829年の『マタイ受難曲』演奏での「復活」を待たずとも、着実に評価を高め、解釈の深みと幅を増し、可能性を広げつつ、現代へと受け継がれ続けている。「絶対音楽」の勝利とも言えるその足取りを辿る。


  • 愛国心にゆれるイランの歌声  ―― 〽 おお神よ、眼を覚ましてくれ
    テルマ・カテビ
    検閲と道徳教義の強要に直面し、イランの歌手たちは自主検閲、当局の制作活動への介入、あるいはロサンゼルスやロンドンへの亡命という選択肢の間で揺れている。「けがれた」音楽のレッテルを貼られコンサートを禁止されたラップミュージックは、政治的解放を切望する現代の若者たちを惹きつけてやまない。


    (日本語版2020年9月号)

  • メッカへの巡礼、サウジアラビアの聖なるビジネス  ―― 宗教的マスツーリズム化が止まらない聖地
    モハメド・ラルビ・ブゲラ
    イスラーム教徒の義務の1つであるメッカへの巡礼は、サウジアラビア政府にとって永遠に保証された天の賜物である。常により多くの巡礼者を受け入れて収益を増やしたいワッハーブ派の指導者たちは、たとえメッカから伝統や美しい景観が失われるとしても躊躇なく開発を続けている…


  • フランス・アンテールのお好み  ―― 裕福で教養あるリスナーがお好き
    ダヴィッド・ガルシア
    フランスのラジオ放送のなかで最も多くのリスナーを得ているフランス・アンテール(France inter)。フランス社会の多様性を正しく伝えることが公共放送の使命としつつも、実際は、「外交官と大臣の子どもたち」である一部のエリートに番組制作や運営が牛耳られて…


  • イタリアの中国人コミュニティ  ―― 繊維産業を担う低賃金労働者たち
    ジョルダン・プイユ&レイ・ヤン
    イタリア中部にあるトスカーナ州のプラート市長は4月、中国人コミュニティに対して、この度の卓越したコロナウイルス対策に関して称賛の言葉を送った。プラートの人口のおよそ2割を占める中国人たちは、その多くが安価な既製服の製造に従事している…


  • 制度的レイシズム、米国人種差別の根源(仏語版7月号論説)
    セルジュ・アリミ
    米国の多国籍企業はこれまでしばしば、自分たちに利益をもたらした悪行を隠すため慈善行為を利用してきた。5月からはブラック・ライブズ・マター運動を含むアフリカ系米国人の非営利団体に数億ドルを寄付してきた。「制度的レイシズム」と闘う運動へのこうした気前の良さは何やら保険を掛ける行為のように思える…


  • 20年におよぶ戦争(仏語版8月号論説)
    セルジュ・アリミ
    今日、アフガニスタンの戦地に赴く18歳のアメリカ人兵士たちは、この戦争が始まった時にはまだ生まれていなかった。2012年、ドナルド・トランプはすでに次のように断言していた。「アフガニスタンから撤退する時期が来た。だが、…


  • 人道支援、その実態  ―― 政治に翻弄される被支援者たち
    フレデリック・トマ
    世界で人道支援に使われた額はここ20年で5倍に膨れあがったが、そのほとんどは先進国の組織が占めている。どのような建前であろうとも人道支援は政治の一形態に過ぎず、その思惑の影に現地の自主性や被害者の自立はしばしば蔑ろにされてきた。


  • 需要が急増する恥辱にまみれた「青い金属」  ―― コンゴ民主共和国コバルト鉱山の変わらない児童労働問題
    アクラム・ベルカイド
    携帯電話、電気自動車などに使われるリチウムイオン電池の製造に不可欠とされるコバルトは、その60%がコンゴ民主共和国で産出されている。その需要にはさらに飛躍的な増加が見込まれ、供給不足を懸念する各国のユーザー企業はこの「青い金属」の長期的な確保に躍起となって…


  • 世界の果てか、自宅の庭先か
    フィリップ・ブルドー
    Covid-19による公衆衛生危機は、肥大し続けていた観光産業の「娯楽活動の商品化」というビジネスモデルを窮地に陥れた。感染拡大を阻止するために人々の移動が制限されるという、この産業の根幹を揺るがす事態は、観光の地域的、文化的な限界を顕在化させた。コロナ後の観光産業はどこへ向かうのか…


    (日本語版2020年8月号)

  • ポストコロナのサステイナブルツーリズム  ―― 観光大国フランスの取組み
    ジュヌヴィエーヴ・クラストル
    以前から環境に配慮した持続可能な観光(サステイナブルツーリズム)は議論されてきたが、COVID-19の流行により、観光業界は生き残りをかけて急速に変革を迫られることとなった。従来の観光から脱却し、新たな観光体系を生み出すにはどうすればよいのだろうか。観光大国フランスで起きている動きを紹介する。


  • 労働、家族、インターネット  ―― 接触なき世界へようこそ!
    ジュリアン・ブリゴ
    COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行により、我々は思いがけず「インターネットが必要不可欠な世界」を経験した。それはITの巨大企業が望んでいた壮大な社会実験であり、感染症の終息が見えたとしても、インターネットなしでは何もできない世界への流れは止まらないだろう…


  • エジプト軍の飽くなき欲望  ―― あらゆる分野に事業展開
    ジャマル・ブカリ&アリアンヌ・ラヴリリュ
    1952年の自由将校団によるクーデタ以来、エジプト軍の組織は徐々に勢力を拡大している。とりわけ、2013年にシーシー元帥が政権をとると、軍はその本来の任務と関係のない分野にも事業を展開してとどまるところを知らない。大統領の庇護のもとに、一般企業にはない特権を得て…


  • 犠牲になった要介護高齢者  ―― 政府の視野が及ばない専門施設
    フィリップ・バケ
    フランスの要介護高齢者居住施設(Ehpad)ではコロナ感染症のクラスターが数多く発生し、その死者数はフランス全体の半数を占めていると言われる。検査やマスク、そして人員の不足、さらに診療体制の不備。政府の危機管理体制の中で忘れがちにされているという怨嗟の声が現場から挙がる。こうした危機状況の背後にある実情を探る。


  • 商業による平和という大いなる幻影  ―― ある「純真」な歴史観
    アラン・ガリグー
    20世紀初頭、作家ノーマン・エンジェルはヨーロッパにおける大きな紛争の非合理性についての考察を展開し、その功績からノーベル平和賞を受賞した。彼によると、ヨーロッパの経済的、商業的相互依存関係の重要性は武力抗争への障壁となるはずだった…


  • ビルマでアウディを売る(仏語版6月号論説)
    セルジュ・アリミ
    1950年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の設立からローマ条約(1957年)や欧州共同市場(1957年)をへて、欧州連合(EU)の設立にいたるまで、欧州統合の立案者は保護主義と主権主義を不倶戴天の敵とみなしてきた。だから、以下のことは驚くことにはあたらない。国際経済が不振に陥り、失業者が急上昇しても、EUは…


    (日本語版2020年7月号)

  • まばたきせずに見つめる  ―― スティーヴ・マックイーンの過去と現在
    ジョン・バード
    ロンドンを拠点とし、そこからインスピレーションを得てきたといわれるアーティストで映画監督のスティーヴ・マックイーン。20年以上にわたり独特で斬新な手法でカメラを駆使し、人間のありようを詩的な映像で見せる作品を編み出してきた…


  • われわれは皆、子どもだ(仏語版5月号論説)
    セルジュ・アリミ
    力を持つ者たちの世界はまたもや地に落ちた。それは、われわれ大衆のせいではない。大戦後の全国抵抗評議会の経済・社会綱領を思い起こしてみるといい。それに、ニューディール政策における労働組合の諸権利獲得と大規模な土木工事もそうだ。だが、当時、フランスのレジスタンス運動員の多くはまだ武器を…


  • トルコで暮らすシリア難民の現状  ―― エルドアン大統領の矛盾した政策の犠牲
    アリアンヌ・ボンゾン
    2011年にシリアで紛争が始まって以来、国外に逃れたシリア人のうち、最も多くが隣国トルコで暮らしている。しかしトルコでは、帰国を諦め定住するシリア人が増える一方、国民の間で反難民感情が高まっている。予期せぬ感染症の大流行に見舞われる中、エルドアン大統領の矛盾した戦略が…


  • 特権階級に奉仕するために製造されたエマニュエル・マクロン  ―― メディア業界の大統領候補
    マリー・ベニルド
    2017年5月、エマニュエル・マクロンは39歳にしてフランスの大統領に選出される。しかしその3年前には、ほぼ半数の国民にしか知られていなかった。大統領選決選投票のまさに直前に発行されたこの記事(本紙2017年5月号)は、メディアの力を利用してわずかな時間のうちに大統領になれるほどの知名度を得たマクロン陣営の内実を暴いている。


    (日本語版2020年6月号)

  • コロナ感染症と気候変動問題
    フィリップ・デカン&ティエリー・ルベル
    感染症の流行には始めと終わりがあるが、気候変動問題はこれを放置すると、後戻りのできない破滅的な状況に至る。新型コロナ感染症の流行に直面した私たちは今、これから何を学び、着実に亢進する気候変動問題にどう取り組めばよいのか。


  • 今すぐにだ!(仏語版4月号論説)
    セルジュ・アリミ
    この30年、新しい危機が襲うたびごとに世界は理性を取り戻し、良識に立ち返り、混乱に終止符を打つといったありもしない希望を膨らませてきた。皆、ついに行き詰まりと脅威をみたとする社会政治的な仕組みを抑え込み、ひっくり返せると考えた。1987年の株価大暴落は続発する民営化の動きを抑えこみ…


  • 商業主義に取り込まれる文化遺産  ―― ノートルダム大聖堂の近代化計画
    フィリップ・パトー・セレリエ
    パリの数多くの歴史的建造物は老朽化対策などの保存措置を迫られているが、国からの財政上の支援は十分ではない。建造物やその周辺地区にモダンな改装を施して訪問客を誘致し収益力を高めようとする動きがあるが、それによって失うものはないのか。筆者はノートルダム大聖堂の修復プロジェクトを例にとって問いかける。


  • モロッコの不透明な行く末  ―― 飛躍する経済発展の陰で高まる抑圧
    ピエール・プショ
    モロッコでは国王が主導となって経済成長に寄与し、富裕層や外国から高い評価を受ける一方で、社会構造に起因する貧困格差は解消されないどころかますます深刻化している。虫けらのような扱いを受ける国民の不満は募るばかりである。


  • スウェーデン、緊急事態宣言なき闘い  ―― 危機の後にまた危機はやってくるか
    ヴィオレット・ゴアラン
    多くのヨーロッパ諸国がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)を封じ込めるための緊急事態宣言を布告した中、スウェーデンは強制的措置を選ばなかった。政府は国民に移動や接触の制限を奨励したが、外出の全面的な禁止を強いてはいない。果たして本当にその賭けは成功するのだろうか。


  • 2019年の英国総選挙で労働党はなぜ敗北したのか  ―― 原因はBrexitだけだったのか
    ヒチャム・イェザ
    英国の12月の総選挙において、労働党はイングランド北部の長年同党を支持してきた選挙区(通称「赤い壁」)の多くで議席を失い、保守党に地滑り的勝利をもたらした。これはそれらの選挙区でBrexit支持から得票が大きく保守党に移ったことが主因であるが…


    (日本語版2020年5月号)

  • 行き詰まるロジャヴァの今  ―― 北シリアのクルド人自治区をめぐるシリア、ロシア、トルコの駆け引き
    ミレイユ・クール&クリス・デン・オンド
    主にトルコ、シリア、イラク、イランにまたがる一帯に暮らすクルド人は、自分たちの国家を持たない最大の民族と言われる。2013年、クルディスタン地域の西にあたる北シリアのクルド人は、事実上の自治権を獲得し、民主連邦“ロジャヴァ”を樹立した。2019年10月、同地域からの米軍撤退が発表されるや、虎視眈眈と領土拡大の…


  • ポストコロナ社会と病院  ―― コロナが暴く医療界の新自由主義
    アンドレ・グリマルディ&フレデリック・ピエル
    入院期間の短縮やべッド数の削減など新自由主義的な医療を続けてきたフランス。新型コロナウイルスはフランスの商業化した医療のあり方を暴き出した。あるべき医療の未来のためには社会保障創設期の理念へ回帰し、人間本位かつ公共的な医療政策にする必要がある。


  • 製薬会社にとっての金脈
    カンタン・ラベリ
    フランスでも、新型コロナウイルス感染症に対する大規模なPCR検査が行われないことが重大な問題となっているが、それを阻んでいるものは、長年にわたる保健行政に対する政策決定者たちの無関心だ。また、人々の健康と引き換えに富を得んとする動きにも、注意が必要である。


  • 大都市が国を見捨てる時  ―― 進歩主義はポピュリズムへの解毒剤か?
    ブノワ・ブレヴィル
    先進諸国では、進歩主義、開放主義、イノベーションをキーワードに、首都や大都市がグリーン資本主義を発展させ、富と繁栄を謳歌している。一方でその他の地域、小さな町村や過疎の進む地方は、経済が停滞し住民は未来に光を見いだせずにいる。そこに目を付けて台頭する極右やポピュリズム勢力により、国は都市と地方との分断を深めている…


  • 次の「この世の終わり」までに……
    ルノー・ランベール&ピエール・ランベール
    コロナウイルスによる感染症の流行で我々の社会システムが揺らいでいる。その影響がこれほどまで大きくなったことには、我々の側に何らかの理由があるのではないか。グローバル化とともにひたすら自由主義経済を推進して来たことの意味を、改めて考えてみる必要がある。我々は、これを機に、これまでの社会・経済理念と訣別し方向転換を図ることができるのだろうか。


  • イスラエル・パレスチナ問題 戦争に繋がる「和平」案  ―― 根強く残る植民地主義
    アラン・グレシュ
    2020年1月、トランプ米大統領は「世紀の合意」と自賛する中東和平案を発表した。しかしそれは同大統領の娘婿でユダヤ人のクシュナー上級顧問が中心となり、パレスチナ側の主張を一切考慮せずに作成したもので、パレスチナの人々には到底受け入れられない内容だ。こうした手法は、かつてイギリスやフランスが自国の国益のためにアジアやアフリカを分割した植民地主義を彷彿とさせる…


  • パリ・コミューンの女たち  ―― ルイーズたちの反乱
    エロワ・ヴァラ
    洗濯女から女性記者まで、敵対者から「ぺトロルーズ(石油放火女)」と呼ばれ恐れられた女たちは、パリ・コミューンの戦いでめざましい働きを見せた。これは武器を手に取り、より公平で幸福な世界をつくるための戦いだ。選挙権はなくとも、彼女たちは集会で演説し、公平な賃金や託児所の設置を要求し、自由婚が認知されるよう努めた…


    (日本語版2020年4月号)

  • amazon配送センターの裏側  ―― 不十分な新型コロナウイルス対策
    ジャン=バティスト・マレ
    COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策として世界中で外出禁止令が出される中、アマゾンの利用は急増し、配送センターは前代未聞の注文量の対応に追われた。2020年3月、パンデミックの最中に欧州の倉庫では何が起きていたのか…


  • 感染症の大流行に立ち向かう、それは生態系を守ること  ―― コロナウイルスはどこから来たのか
    ソニア・シャー
    コロナウイルスの脅威に世界中が慄いている。このウイルスの発生源は野生動物だと言われるが、こうしたウイルス性の感染症が繰り返し起こるのはなぜなのか。そこには、人間と動物との関係の変化に関する根源的な理由があるのではないか。 


  • 米国に従属し続けるEU(仏語版3月号論説)
    セルジュ・アリミ
    欧州連合(EU)から離脱するという英国の決断は遅きに逸した。18世紀の産業革命以来の自由貿易、ウィンストン・チャーチルとフランクリン・ルーズベルトが「特別な関係」を結んで以来の米国への追随、英国の経済と政治がシティ・オブ・ロンドン(金融街)に支配されて以来の金融資本主義、10年続いたサッチャー・レーガン時代以来の徹底した新自由主義政策…


  • 石炭を貪るデジタル通信技術  ―― 昨日のエネルギーが支える明日のテクノロジー
    セバスチァン・ブロカ
    デジタル通信技術は環境面でクリーンな技術だというイメージがあるが実はそうではない。発展途上国の環境を犠牲にして得られる資源やエネルギーを大量に消費して成り立っており、先進国との不均衡な利害分配を増幅させている。 


  • 危機に陥るフランスの乳幼児期公共サービス  ―― スマートゆりかごの背後で待ち伏せる市場
    レイラ・シャシャアニ
    母子保護センター(PMI)の役割の縮小、公立保育所の質の低下と民間企業の参入による収益第一主義の台頭、児童精神科医の深刻な不足、早期の障害判定による画一的予測医療の広がり、非行化予防のための特定層への監視と管理……。かつて世界の優等生とされていたフランスの乳幼児ケア政策に陰りが広がっている。 


  • 自転車で、まちを走ろう!  ―― 持続可能な社会の構築に向けたコペンハーゲンの成功例
    フィリップ・デカン
    コペンハーゲンの市民は、通勤・通学、子どもの送迎、商売、そして自らの人生を顧みるときにも自転車を利用する。自転車は、このまちの景観に欠かせないものとなり、また、人々の生活に根づいている。こうした自転車文化には、利用者目線で整備された確固たる都市計画… 


  • 米中貿易戦争は台湾にとって好機か?  ―― 生産拠点の移転を引き受ける台湾企業
    アリス・エレ
    米中貿易摩擦の中で、台湾の存在感が増している。アメリカの対中関税引き上げを受けて台湾は対米輸出を大きく伸ばし、5Gを巡る対立を受けた中国ファーウェイ社は半導体の輸入先を台湾へ移転させた。これらサプライチェーンの再編の動きには各国の政治的動きが密接に絡んでいる… 


  • イランの破壊か、中国の封じ込めか  ―― アメリカが抱えるジレンマ
    マイケル・クレア
    なぜトランプ氏はイランのカセム・ソレイマニ司令官を殺害させたのだろうか? 一体誰がこの恐ろしい企てを実行するに当たって、助言をしたのだろうか? いずれにせよ、トランプ氏の決定はアメリカ政府の総意ではなかったのだ… 


    (日本語版2020年3月号)

  • バラ栽培の舞台裏  ―― とてもロマンティックとはいえない生産方法
    ジュルマ・ラミレス&ジョフロワ・ヴァラドン
    あらゆる機会の贈り物の定番ともいえるバラの花。形、色彩、香りは、華麗、豊かさ、芳醇のシンボル。そして数え切れないほどの品種を誇る。しかし、その商業生産の舞台裏には環境志向からはほど遠い、知られざる風景がある。 


  • 多言語主義、学校教育における頭痛の種
    フィリップ・デカン&グザヴィエ・モンテアール
    ルクセンブルク北部に2018年度に開校したエドワード=スタイケン・ド・クレルヴォー学校は磨きコンクリートの超近代的な校舎と、森を望む巨大なガラス窓、そして最新設備の整った教室を備えている。ここは、新しい教育課程を採用している4つの公立校の1つだ。 


  • 言語はいかに形成されるか  ―― ルクセンブルクという実験室
    フィリップ・デカン&グザヴィエ・モンテアール
    金融やEU関連機関のひしめく小国ルクセンブルクは、ほとんどの国民が3~4カ国語を操る驚くべき多言語国家でもある。もともとドイツ語、フランス語が優勢を占めていたこの国で、これまで家庭内の話し言葉の域に留まっていたレッツェブーエシュの見直し機運が高まっている。 


  • 歴史の「影」に隠れていた女性画家ナディア・レジェ  ―― アンガージュマンの形
    フランソワ・アルベラ
    ナディア・レジェは帝政ロシア時代のベラルーシに生まれ、ロシア革命の最中に画家を志し、1920年代半ば世界各地から外国人芸術家が集っていたパリへと渡った。いずれ夫となるフェルナン・レジェのアトリエで研鑽を積み、戦間期ついで戦後と、労働者や彼らの側に立つ指導者を描きつづけたが、没後ほとんど… 


  • 年金改革の本質  ―― フランスが育んできた社会意識への挑戦
    マルティーヌ・ビュラール
    マクロン大統領は選挙公約とした大規模な年金改革に取り組み、政府は多数存在する年金制度を2020年夏までに一本化するとの基本方針を2019年9月に打ち出した。その内容に組合勢力が反発し12月以降大規模なゼネストに発展している… 


    (日本語版2020年2月号)

  • 生涯給与としての年金  ―― 年金の議論から理想の社会像を描き出す
    ニコラ・カステル&ベルナール・フリオ
    フランスでは年金は退職後の生涯給与であるという考え方が根強い。マクロン政権はこれを拠出保険料に応じた給付制度に改革しようとしているが、筆者は、退職者の労働のあり方に着眼して生涯給与の考え方の正当性を説く。


  • 岐路に立つフランスの哲学教育  ―― 「試験の女王」に君臨する哲学への提言
    セルジュ・コスペレック&フレデリク・ル・プレンヌ
    フランスでは哲学が思考を鍛えるための重要な学問とみなされているが、教育現場では長らく変化が厭われ、今や現状にそぐわない部分が浮き彫りになっている。生徒が真の批判精神を養うためにはどうあるべきかを考察する。


  • 薬で飼い慣らされる子ども達  ―― 従順さと良い成績のためにリタリンは必要か?
    ジュリアン・ブリゴ
    リタリンはもともと、比較的まれな精神障害である「注意欠如多動症(ADHD)」の対症薬だった。それがアメリカでは数年前から少しでも態度に問題のある子どもに簡単に処方されるようになり、また、集中力を飛躍的に高める魔法薬として大学キャンパスでも猛威を振るっている…


  • フランス人民戦線を生み出した労働者階級  ―― 経営者と労働者の勢力関係が覆るとき
    ジェラール・ノワリエル
    1カ月以上もつづいたフランスの年金制度改革に抗議するストライキは日本でも話題となった。政治家や経営者など権力者側の意向に対し、市民=労働者が自分たちの声を届けるためストやデモといった集団行動に出ることが、フランスでは民主主義の名のもとに広く認められている…


  • フランス外交の転換?  ―― マクロン大統領のロシアへの接近と「ディープステート」批判
    ジャン・ド・グリニアスティ
    マクロン大統領は、ヨーロッパの存在感が薄れてゆくことに危機感を表明し、就任以来積極的にヨーロッパの再建を目指す外交活動を展開している。最近では、NATOは「脳死状態」にあると語り、アメリカとの関係の見直しの必要性を訴えるとともにロシアとの接近を図るなど、ヨーロッパ政界に波紋を広げている。


    (日本語版2020年1月号)

  • ロボットは失業の犯人か  ―― 労働のオートメーション化に関する幻想
    フロリアン・ビュトロ&フィリップ・シュターブ
    数年来、ロボットが人間の労働を代替し、多くの人々が職を失うとする議論が盛んだが、コンサルタントやメディアの喧伝によるところが大きい。現実には、企業は生産工程の急激な変化を望まず、費用対効果を吟味して慎重な対応をとるものだ。ドイツ発の「インダストリー4.0」を例にとって、著者はこの議論の真相を探る。


  • デジタルデータをめぐる攻防  ―― 「21世紀の金塊」をものにするのは誰だ?
    セドリック・ルテルム
    インターネットユーザーは誰もがデータ流通に関わっているが、あまりそのことに気づいていない。我々の大切なデータはいったいどんなルールで世界を行き来しているのだろうか? 21世紀最大の課題の一つと言われる電子商取引のルール作りについて、世界各国はそれぞれの立場と思惑をもって戦いに挑んでいる。


  • これは“殺戮”だ!(仏語版12月号論説)
    セルジュ・アリミ
    リュミエール・リヨン第2大学のナタリー・ドンプニエ学長は、11月8日に焼身自殺を図った1人の学生についてコメントする立場にあったが、それをうらやむ者はだれもいるはずがなかった。アナス・Kは、焼身自殺という自らの行いで、貧困と生活状況の行き詰まりに抗議しようとした。彼は大学に通いながら働かなければならなかった…


  • NATOの前途(仏語版11月号論説)
    セルジュ・アリミ
    英国が欧州共同市場に加盟し、欧州連合(EU)のとどまることのない拡大に道を開いて以来、EUはその名に値する外交政策を見つけ出すことができなかった。時にはその名に値する以上の政策もあるにはあったがきわめて稀なことだった…


  • アマゾンの森林は誰のもの?  ―― 気候問題を根拠とした介入権の是非
    ルノー・ランベール
    気候変動問題への関心が世界でますます高まる中、アマゾンの森林破壊が特に注視されている。ブラジルのボルソナロ大統領とフランスのマクロン大統領の間の議論の応酬はメディアによって広く報道された。


  • 東ドイツ併合の歴史  ―― ベルリンの壁崩壊から30年
    ラシェル・クナベル&ピエール・ランベール
    ベルリンの壁が崩壊して30年を迎えるが、近年両ドイツの統一に関する様々な検証が行われている。東ドイツは政治的な自由を獲得し市場経済に組み込まれたが、その過程で大きな経済的、社会的代償を払った。西ドイツは東ドイツを「併合」し、巧みにこれを収奪したのだという議論が、ここでは展開されている。


  • 再度の飛躍を狙った英国自由民主党  ―― Brexit論議にあって英国中道政党が迎える困難
    リチャード・シーモア
    英国の12月の総選挙は保守党が議席数で過半数を大きく超える結果で終わった。EU残留を掲げ中道の姿勢で臨んだ自由民主党は、この論説の予測どおり受け入れられず議席数を減らしたうえスコットランド独立党の後塵を拝し第4党に沈むことになった…


    (日本語版2019年12月号)

  • カシミール、ヒンドゥー教の白刃  ―― ナレンドラ・モディ首相の憲法による強権発動
    ヴァイジュ・ナラバネ
    ナレンドラ・モディインド首相はイスラム教徒に対する攻撃を強めている。アッサム地方では、8月31日に彼らのうち190万人の国籍がはく奪された。その3週間前にはジャンム・カシミール州が二分割され、その特別な地位に終止符が打たれた…


  • ロシアで深刻化するドメスティック・バイオレンス  ―― 毎年8300人以上の女性が殺害されるロシア
    オドレイ・ルベル
    昨今、被害に遭った女性たちがSNSを通じて声を上げることで、部分的にではあるが、ドメスティック・バイオレンスの実情を窺い知ることができるようになった。もちろんそれは氷山の一角に過ぎない。ロシアでは毎年8300人を上回る女性たちがなすすべもなく、その配偶者や近親者に殺害されるという…


  • ワシントン vs 北京(仏語版10月号論説)
    セルジュ・アリミ
    米国は今や、中国とロシアに同時に立ち向かうのは無理だと考えているようだ。数十年後には、地政学的なライバルは中国政府になっているだろう。来年の大統領選挙で激しく対立することになるドナルド・トランプ氏の共和党政権と民主党の間でさえこの点については一致している…


  • 「セーフシティ」、アルゴリズムに統治される都市  ―― 監視、分析、予測、管理……
    フェリックス・トレゲ
    ビッグデータとAIを基盤にした社会監視ツールがフランスの都市にも広がりつつある。国はデータ収集分析と映像自動解析の先端技術分野における国内企業の育成を目ざし、地方自治体は民間企業グループと組んで実証実験を重ねている…


  • ダーチャの歴史  ―― ロシアに続く小菜園の伝統
    クリストフ・トロンタン
    社会主義建設の歴史を受け継ぎながら、ペレストロイカ後の混乱を生き抜くことになるダーチャ(小屋付き菜園)。それはロシアでも数少ない成功例のひとつであったが、昨今、急速にダーチャ離れが進んでいる。SNSや外国旅行に魅了された現代人が再びダーチャに戻って来るためには…


  • モスクワが見ている世界  ―― ロシアの戦略思想を理解する
    リチャード・サクワ
    文化的にはヨーロッパに近いと感じているロシアは、「多極主義」を掲げアメリカ・西欧諸国と対立し、世界秩序を乱していると非難されている。その一方で大ユーラシア主義を提唱しつつ中国と接近しているが、その戦略の本当の意図はどこにあるのか。冷戦終了後…


    (日本語版2019年11月号)

  • 「未来の病院」の悪夢  ―― 救急医療の危機はどこから来たのか?
    フレデリック・ピエル
    救急医療の窮状を訴え3月から続いているストライキを受け、9月9日、フランス連帯・保健大臣は救済案を発表した。しかしそれは困窮する現場を抜本的に救うにはほど遠く、マクロン政権の空洞政治を象徴している。自他ともに世界最高水準を認めるフランス医療が直面する危機について考察する。


  • サンフランシスコのタリバンたち(仏語版8月号論説)
    セルジュ・アリミ
    米国の人種差別に対する「抵抗運動」にとって、ニューディール政策[1930年代、米国ルーズベルト大統領が世界恐慌を克服する目的で実施した一連の経済政策]の資金援助で共産主義者の芸術家が作った壁画を破壊する必要があるのだろうか?ヴィクトール・アルノトフの13枚のシリーズ壁画『ライフ・オブ・ワシントン』は…


  • アイデンティティに関するアメリカの国勢調査  ―― 「あなたの人種は何ですか?」
    ブノワ・ブレヴィル
    アメリカでは、10年に一度の国勢調査が2020年に実施される。その調査の歴史は200年以上前に遡り、時代の趨勢にしたがって質問項目や回答方法が変更されてきたという。アメリカ社会の変化を映し出すこの国勢調査は、特に人種や民族に関する「アイデンティティ」を巡り、人々の間で激しい論争の的と…


  • フォン・デア・ライエン氏を選んだのは誰か?(仏語版9月号論説)
    セルジュ・アリミ
    2019年7月の猛暑は思いがけない幸運だった! この猛暑のおかげで現在生じているいくつかの変調、特に民主主義の変調を示したある出来事が覆い隠された。ヨーロッパの人々は暑さでまともな判断ができなくなり、少なくとも3年前から聞かされてきた政治言説が崩れ去ったことにほとんどの人が気付かなかった。


  • ポルトガルの奇跡的経済復興の舞台裏  ―― 奇跡? それとも蜃気楼?
    ミカエル・コレイア
    2015年に誕生したポルトガルの左派連立政権は、緊縮を迫る欧州委員会に屈せず、独自の穏健路線で経済を復興させた。この奇跡的な成功には各方面から称賛が集中している。しかし、その舞台裏では公共投資や社会政策を極端に切り詰めた結果、多くのひずみが生まれていた。その実情から、今、ポルトガルが抱える難題を検証する。


    (日本語版2019年10月号)

  • 安価品から長持ちする商品へ  ―― 製品保証期間の長期化で世界が変わる
    ラズミク・クシェイアン
    フランスでは、大量消費社会を改め「環境に優しい社会」に移行する観点から、商品の保証期間を10年に延ばすことを求める運動が広がっている。その期間内に修理に出される件数が増えることから、雇用機会も確保されるという。


  • フランスにおける階級闘争
    セルジュ・アリミ&ピエール・ランベール
    「黄色いベスト」運動はバカンスをはさんで再開された。あるグループはパリ空港の民営化に反対し、空港で抗議活動を展開するなど、反緊縮、反貧困・格差是正といったネオリベ経済批判へと突き進んでいる…


  • 公衆向け医療ウェブサイト、ドクティッシモの登場  ―― 女性ユーザーは情報の宝庫
    ソフィー・ユスターシュ
    フランスでは、2000年代初頭、公衆向け医療ウェブサイト、ドクティッシモが出現した。それにより、医療情報が大衆化され、患者は医師への依存から解放されることになった。同サイトのヘビーユーザーは大多数が女性であり、ネットを使いこなす女性ユーザーたちが健康のために進んで提供するプライベート情報は、綿密に分析され…


  • 自由貿易か環境か(仏語版7月号論説)
    セルジュ・アリミ
    欧州議会選挙で10パーセントの議席を獲得した欧州緑の党は、彼らの運動の政治的立ち位置をめぐる古めかしい議論を再燃させた。この党は、その同盟者の多くが示唆するように左派なのか、それとも環境派のかつてのリーダーたちがマクロン氏と手を組んだことから明らかなようにネオリベラル派なのか?


  • アガデスの罠にかかった移民たち  ―― EU指令が混乱させたニジェールの町
    レミ・カラヨル
    サハラ砂漠の南部に位置する世界文化遺産の町アガデス。14世紀以前よりサブサハラアフリカから北アフリカや地中海への人口移動をコントロールする要所として栄えてきた。ところが2015年、北上する移民を堰き止めたいEUはニジェール政府に圧力をかけ、それまで容認されていた移民援助が違法に。

  • 民兵のパラダイス  ―― アガデスの罠にかかった移民たち
    レミ・カラヨル
    「今はもう移民は見かけなくなりました。でも彼らは今も存在していますよ」。「オルタナティブ市民スペース協会」の事務所で、アガデス地区コーディネーターのナナ・エコイエさんは移民の輸送を違法化した2015-36法の影響を嘆く。「彼らはもともと暴力の被害を受けていましたが、今や…


    (日本語版2019年9月号)

  • この世の終わりは来ない  ―― 書店に溢れる終末論
    ジャン=バティスト・マレ
    人類による環境破壊が進み、やがて地球上の生活圏が崩壊するという言説が溢れている。自然対人間という単純な対立関係を立てて人類一般を批判する。しかし、ことはそういう抽象的な善悪論ではなく、自然を費用のかからない資源として利用しつつ…


  • インターネットなしではもう生きられない?  ―― 「完全デジタル化」が置き去りにした数百万人
    ジュリアン・ブリゴ
    世界は完全デジタル化に向かっている。近い将来、人々は乗り物に乗るにも買い物をするにも、税金を払うにも、スマホでスキャンしたりインターネットを使うしか方法がなくなるのだろうか? 大丈夫、みんな慣れて使いこなせるようになるさ、と推進派は言うが…


  • 星を! 夜空を取り戻す運動の意味するもの  ―― 動物、植物そして人間に与える夜間照明の光害
    ラズミク・クシェイアン
    人工光が都市を中心に地球全体に広がり、動植物世界全体、そして人間生活に及ぼす害が問題にされるようになっている。星空を取り戻すための運動や、人工照明を制限する動きもみられるが、光によって受ける恩恵と、その制限とをどう調和させ…


  • 「世界遺産」ラベルの功罪  ―― 観光資源の保護と活用の両立を目指して
    ジュヌヴィエーヴ・クラストル
    「世界遺産」は多くの観光客を惹きつけており、観光立国を目指すわが国においても世界遺産の登録に関するニュースは例年注目を集めている。観光資源としての世界遺産は大きな経済効果をもたらす一方、それが引き起こす弊害がにわかに表面化しているという…


  • 工業と自然の調和
    ジャン・ギャドレ
    私たちはこれまで長年にわたって、経済成長による生活水準の改善をめざして工業化を促進してきた。しかしここにきて、それがもたらす自然環境への過剰な負荷が無視し得なくなり、資源やエネルギーの節約が強く叫ばれている。工業化と自然の調和の糸口を探る。


  • 笑いのセラピーが労働者を救う?  ―― 自殺問題改善のためのリゴロジーの実践
    ジュリアン・ブリゴ
    トゥールーズ大学病院グループやフランス国鉄は、労働環境悪化による労働者の自殺問題に直面している。経営陣は、リゴロジーという“笑い”のセラピーによって、労働者の幸福度を高め、問題を解決しようとしているが、事態は改善していないようだ。



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仏語版 本紙3月号

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ディプロ講演会
「バイデン政権2カ月で何が変わったか?」

▶︎2021年3月20日(土)午後零時〜午後2時(zoomで開催)
▶︎報告者:大矢英代さん/ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画監督
▶︎参加費無料

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ル・モンド・ディプロマティークの翻訳記事は1996年以来、有志の活動によってホームページ上に掲載されてきました。2015年3月に「日本語版の会」として任意団体を設立し、2017年7月に一般社団法人として再出発しました。私たちの会の目的は、グローバリゼーションの進展によって複雑化した現代世界を理解し分析するために、様々な国際問題に関する情報と知識を読者の皆様にお届けし、世界に開かれた市民社会の形成に貢献することです。日本社会にとって特に意義のある記事を選び抜き、できる限り多くの記事を翻訳しようと日々努めています。現在はインターネット版のみで記事を発信していますが、近い将来には紙媒体の発行も視野に入れて活動を行っています。






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